1部
「私、アリア・アルモンドはランドルナ王国に」
「宣戦布告する」
彼女の宣言は後に国民全体に届けられた。
驚く者、怒る者、悲しむ者、応援する者・・・
様々な感情で国は揺れる。
その中で彼女の目は揺らいでいなかった
目的を遂行するただ一点の為に
無の魔女として
時は遡る・・・
眩しく輝く太陽、少し冷たいそよ風、ネメシアの清涼的な香り。
「ふぅ〜良い天気!」
小高い丘にある草原の上で女の子が大の字で日向ぼっこをしていた。
「アリア、こんなところにいたのね。山菜を取りに行ったにしては遅いと思ったら。」
母タラ・アルモンドが腰に手を当てながら近づいてきた。
「お母さん!ここ気持ち良いんだよ!ほら!ここに寝てみて!」
「もうっ」
「はやくはやく!」
「はいはいっ・・・あら!ほんとね。気持ち良いー!」
「でしょでしょ!」
アリアは足をばたつかせながら気持ちよさそうに寝そべりながら話を進める。
「私お母さんみたいな沢山の人を助ける魔女になりたいな!」
「ふふっそれなら沢山勉強しなきゃなれないわよーっ」
「えぇー、勉強はきらーい」
「でも魔術は使い方を間違えると大事故になりかねないからしっかり勉強して、立派な魔女を目指しましょうね」
「はーい」
頬を膨らませ、不貞腐れながらそう言うアリアにタラは優しい笑みを浮かべた。
「お父さん今日は早く帰ってくるんでしょ?」
「そうよー、今日はアリアの誕生日だし、絶対に早く帰ってきてくれなきゃ困るわー。ほらっその前に一緒に山菜取りに行きましょうねっ」
「うんっ!今日は私も一緒に料理する!」
それから2人は木漏れ日の差す山林に向かった。
暮夜、テーブルには豪勢な料理がズラっと並ぶ。するとドアの術鍵を開ける音。
「良い匂いが外からでもわかったぞー」
「お父さん!」
父バディ・アルモンドの腰に飛び込むアリア。
「朝言えなかったけど、誕生日おめでとう!」
「ありがと!」
「あなたおかえりっ」
タラが自家製ソースのかかったステーキをテーブルに置きながら言う。
「タラ、ただいま。今日はどうだった?」
「今日はアリアも一緒に料理したのよ」
「そうなのか!アリア偉いな!」
「えっへん!」
「おおお!美味そうな料理が並んでるな!取り敢えずすぐ手を洗ってくるからアリアもタラも椅子に座ってて良いぞー」
「はーい!」
「はーいっ!」
洗面所でバディが水の魔術石に手をかざすと石から蛇口を繋ぐようにして描かれている術式が反応し蛇口から水が出る。
石鹸で手を洗い、また魔術石にかざすと水が止まる。
この生活に不可欠な魔術石はランドルナ王国内で流通しており、各属性の魔術石を使えば、使用者が属性魔術を持たなくてもその石を介して力を行使できる。
「じゃあ食べようか!頂きます!」
「頂きますっ」
「頂きます!」
「んん〜うまい!今日の飯は格別だな!」
「もうっ。それいつも言ってるじゃないのっ」
「そうだっけか?だけどうめーんだもん、しょうがねぇ。いつもありがとな。」
「改まってやめてよっ。照れるじゃないっ。」
「お父さんお父さん、お母さんの顔が赤くなってるよ!」
「ハッハッハッハッハッ」
「あはははは!」
2人の笑い声と共にタラも照れくさそうにしていたがその笑いにつられてクスっと静かに笑う。
「そうだアリア、これ」
そう言うとバディはポケットからリボンで包装された正方形の小箱を取り出した。
「なにこれ〜?」
「開けてみろ」
アリアがその小包を開けるとそこには赤い綺麗な石でできたネックレスが出てきた。
「すごくきれい・・・」
アリアがそのあまりの輝きにうっとりしているとバディが口を開く。
「アリアが欲しがっていたネックレスだよ。今日はアリアの誕生日だから少し奮発しちった!」
「ありがと!お父さん!」
アリアは座っているバディの腰に再び飛び込み、喜びを表した。
「そのネックレスには俺の魔術も込められているんだ。アリアが本当に辛くなった時に俺がそこから登場!っていう魔術だ!」
「もうっそんな魔術はこの世にありません!」
バディの冗談にタラは困り顔でそう答えた。
幸せな空間、笑い声の絶えないこんな日々が一生続くとこの時の3人はそう思っていた・・・
その頃、ランドルナ王国王都に拠点を置く軍本部に不穏な動きがあった。
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