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クソリプ魔は石化する  作者: タテワキ
プロローグ
1/19

第0話 遥か昔のクソリプ魔

 1835年 江戸近郊


 夕暮れの山のなかを二人の岡っ引きたちが駆けていた。


(せい)(すけ)! 待ってくれ盛助!」


 盛助と呼ばれた男が地面を蹴りながら振り向く。


「待たん! この非常事態に! ()(きち)は鍛えかたが足りんのじゃ!」


 山のなかに民家が見え始めた。薄暗さが二人の恐怖心をき立てる。


「あの村か?」

「ああ……恐らくはそうじゃ」


 立ち止まった二人の目に映っているのは……。道行く人はおらず、水田は干からび、家々の壁から雑草が飛び出している寂れた村。荒れ放題という言葉がぴったり当てはまる。心なしか空気までよどんでいた。


「た、たのもー」


 佳吉が辺りを見回しながら呑気な声を上げる。


「親分たち! やっと来てくださったか!」


 物陰から飛び出して来たのは無精(ぶしょう)(ひげ)を生やした四十代後半くらいに見える男。この村の住民だろうか。


「単刀直入に()くが。この村で人が石像になっちまったってのは本当かい?」


 男は泣きついてきた。


「本当だ! お、俺の、俺の可愛い一人娘が……! 誰に頼っていいかも解らず……親分たちを呼んじまって……すまねえ……!」


 さっそく男の家に案内してもらう。家というよりもあばら屋だ。埃を手で払いながら薄闇のなか目を凝らす。――いた。

 天に向かって手を突き上げ、苦しそうに顔を歪める二十代前後の女の石像。


「な、なんだってこんなことに……!」


 佳吉の口から驚きの声が漏れる。


「おい旦那! なにかこの娘たたられるようなことはしなかったのか⁉」


 盛助が男の肩を(つか)んで揺すった。男はぶんぶんとかぶりを振る。


「知らねえ……! あ……! 確か人様に恨みを込めたふみを送ったとか――」



 結局このとき犯人は捕まらなかった。だが、この犯人の子孫は今もなお現代で生き続けているはずである。



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