08:天体観測
あのサソリに会った後、三人は神坂家に帰った。
「「「ただいま」」帰りました」
玄関で帰った時の挨拶をした三人は、靴を脱ぎ、リビングへ行く。
今の時刻は14:00。外は少し緋色に染まりはじめていた。
「おかえりなさい、葉くんは寝室でお仕事だから、静かにしてね。」
「あれ、今日は会議ありましたっけ?」
「急遽入ったのよ。お願いね。」
「「は~い」」「分かりました。」
在宅ワークである葉は、二日に一回くらいの頻度で会議がある。
今日は単に事務作業だけのはずが、急遽会議が入ったのだ。
閑話休題。
三人はそれぞれの自室に行くと、制服から私服に着替えて、リビングに集まり勉強会を始める。
そう、三人は大分勉強ができるほうなのだ。むかつくことに。(-_-メ)キエエエエエ( ゜д゜ )!
その勉強のできる原因がこれ、毎日の勉強会である。
友達の学生三人が集まって勉強会。これだけ聞くと絶対に集まっただけで勉強をほぼしないで遊ぶだけだと思う(ド偏見)が、この三人は一時間きっかりインプット、15分休憩、30分で互いに自分の得意科目で問題を作り、解きあうなどというよくわからん勉強法をとっている。
それでも、彼らにとってはこれが最善の勉強法なのだ。
そんなこんなで18:00となり、窓の外も暗くなってきた。
「そろそろ、勉強会は終わりにしようか。」
修矢がそう言うと、優と浅木は頷き合い、開いていた教科書と参考書を閉じる。
「あら、もう終わったの?少し早いんじゃないかしら?いつもは夕飯前までやってるじゃない。」
「はい、でも今日は晴天かつ、新月なので。」
「…!なるほど、それじゃあ夕飯前までには帰ってきてね。」
「ありがとうございます。」
修矢は夜宵に許可を貰い、外に出る準備をする。
「私も一緒に行くわ。」「俺も~」
浅木と優も準備をする。
そして三人は外に出て、エレベーターに乗る。
三人は上行きのボタンを押し、屋上に出た。
「ふぅううう……まだ少し寒いわね。」「もう春も中ごろなのにな…」「………」
修矢だけは何も話さずに、上を向いていた。何かに見惚れるように。実際見惚れている。
それに釣られて二人も上を向くと、そこには満天の星が広がっていた。
「「うわぁあぁぁぁあぁぁぁぁ!!」」
二人は、その神秘的な夜空に歓声を上げる。
そう、修矢達は天体観測に来たのだ。修矢は星と星座が好きで、小学生のころから晴天の日の夜はよく明かりのない公園や屋上に行き、天体観測をしていた。
「きれいね~」「なぁ、しし座はどこだ?」「え~とね……」
修矢は星座早見盤を暗記しているので、大体の星の名前と星座の位置を覚えているのである。
「ああ、あそこだよ。……あのレグレスっていう一等星が胴体の前身の下の方……胸元の星だから、あとは記憶の通りに結べば優の星座、しし座だよ。。」
「サンキュー」
「ねぇ、それじゃあ私たちの星座は?」
「今は見れないよ。でも、あと一か月くらいかな…それくらいで浅木のてんびん座と僕のさそり座が見れると思うよ。」
浅木の星座はてんびん座。優と違うのは、二人は二卵性双生児だが、優が予定の二週間前に、浅木が予定の三週間後に、すなわち五週間差で生まれたからだ。
「あ、もう19時だ、帰ろう。」
彼らは屋上を後にし、家に戻り、夕飯を食べて、順番に風呂に入り、歯を磨き、それぞれの部屋に戻る。
「それじゃあ、おやすみ」「おやすみなさい」「やすみー」
部屋に戻ると修矢は日記をつけて、ベッドに潜る。そしてまたあの夢を見る。
あの悪夢を。
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次回は4月17日18:00を予定しています。