05:「今」の日常‐4 まさかの重大発表
教室に入った修矢たち。
またもや廊下のように騒がしくなる教室内。
「栗姫が来たぞ!」
「マジでこのクラスになれて良かった!」
「神様にマジ感謝」
「優君も来たわ!」
相も変わらず話の中心は神坂兄妹。
始業式の日、二人が同じクラスと知って声を上げて喜んでいたクラスメイト達は、まだ記憶に新しい。
なおその時の三人は、全員が同じクラスと知って、周りの喧騒に気付かずに心から喜んでいた。
修矢は席に着くと、他の二人の席を見る。案の定、二人の席は二人のファンに囲まれていた。
「おはよう、天遊君。今日もあの二人は人気者だね。」
「おはよう、加山君。本当に大変そうだよ。」
修矢に話しかけた彼は加山 貯雨恵。
修矢の席の隣の席の子で、彼と修矢はなんか気が合った。何故かは知らない。
貯雨恵は修矢に似て細身で、目元を紙で隠している。目がコンプレックスらしい。オタクを自称していて、最近は「End CreditS ~もう終わってしまった~」というラノベにはまっているそうだ。
ちなみに修矢も読書は好きで、そのラノベも読んでいる。そのおかげで毎日大体どのあたりまで今日読むかを二人で決めて、次の日の朝にどんな話だったかを語り合っている。
「加山君あそこ、伏線だったね。」
「この前、君にこの伏線の可能性を教えてもらってたけど、正直信じられなかったよ。」
「うん、僕も自分で言っててさすがにないだろうなって思ってたんだけどね。」
「やっぱり天遊君は伏線を見つけるのが得意なんだよ。」
「そうかな~」
「それじゃあ今日は『第三章 どこか天邪鬼だった彼』の終わりまでにする?」
「そうしようか。」
キーン コーン カーン コーン カーコン
「おい、予鈴が鳴ったぞ、席に戻れ」
「ねぇ、予鈴が鳴ったわよ、席に戻りなさい」
ハモる神坂兄妹。そのことに気付いた修矢は、
(やっぱり兄妹なんだよなぁ)
なんてことを考えていた。少し自分のいなくなってしまった妹の百合を思い出して、眼が潤う。
ガララララッ
「おーい、お前ら席に着け~。HRを始めるぞ~。」
入ってきたのはこのクラスの担任で、理科の教師である宮川 老敬。まだ教師としての人生はまだ四年だが、カッコよく見える隈とぼさぼさの髪で、「どこかできそうなやつ」という印象を抱く。
しかし、ドジである。
ただ、授業が非常にわかりやすいし、ドジの仕方が毎度面白いので生徒からの人がある。その授業の分かりやすさに一役買っているのが秀逸な例え。言った時にはクラス全員爆笑である。
修矢も気に入っている先生で、いつも面白く、楽しい理科の授業をより面白可笑しくして、楽しくしてくれるからだ。
「…があったぞ。そんで最後に重大発表だ。」
「えっ。なになに?」「なんだろ?」「ミヤ先退職?」「あのドジが祟ってか…」「どのドジだよ。」
クラス中が喧騒に包まれる
「おい。そこ、勝手に退職させるな。重大発表は転校生だ。来週な。」
より一層ざわつくクラスメイト。
「男か?女か?」「イケメンがいいな~」「可愛い子かな?」
ここでさらに宮川先生から追加の情報。
「うるさいぞ。あと来るのは女子だ。」
ウォォォォー!!とクラス中の男子から雄叫びをあげる。いささかこのクラスの男子、女子に飢えすぎじゃないか?
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今は春休みで、毎日ぬくぬく過ごしています
次回は3月28日18:00の投稿を予定しています。