04:「今」の日常‐3 いつもの学校
…ではないんですよねぇ~
「失礼ね~、さっきからいたわよ!」
浅木は少し怒気のはらんだ声でそう言う。
「悪い悪い、それじゃあ乗るか。」
優は悪びれた様子もなく、やってきたエレベーターに乗っていく。そんな優を見て浅木は「まったく…」と呟きながらエレベーターに乗る。そして一緒に修矢も乗る。
もう既にエレベーターはそこそこ満員で、修矢たちの乗った階から二つ下の階から乗ってきた人達に押され、修矢と浅木が密着する。
「……!?…///カァァァァ」
赤面してく浅木。
「ごめん浅木…って、大丈夫?顔、すっごく赤いけど。」
「ううん、大丈夫!それに謝らなくていいわよ、…だって……嬉しいし…」
またもやゴニョゴニョ声になる浅木。
チンッ
一階に着いたエレベーター。流されるように三人は外に出た。三人は一緒にマンションから出ると、優も赤面している浅木に気づいた。なお、茶化す。
「おい、浅木、その顔どうした?まるでリンゴみたいだぞ。」
「お黙り、優」
真っ赤だった顔は一気に無表情に変わる。目線が冷たいものに変わる。
「おっ、青リンゴに変わったってことは別に風邪とかじゃなさそうだな。」
「お黙り、優」
「浅木、リピート再生みたいだよ」
同じ返しをした浅木に修矢は微笑しながらそう言った。
それから三人は世間話をしながら登校する。たまに浅木の意味の分からない高度なツッコミで若干場が凍るのもいつも通りの光景だ。
天桜学園。
彼らの登校しているこの学園は現代、日本一の大きさを誇る中高一貫制の学園で、現在中等部三年の三人は来年高等部になる。
また、この学園は不思議な建ち方をしており、東西南北、そして中央に棟があり、どれも五階建てで、それぞれが二階と四階の渡り廊下で繋がっている。
中等部では中央棟で学び、その後自分にあった学科を五つのうちから選ぶ。それぞれ普通科(中央棟)、工業科(西棟)、理数科(東棟)、情報科(南棟)、音楽科(北棟)となっている。ちなみにそれぞれの人数は普通>理数≧工業>音楽=情報である。
しかし、専門学科にいる生徒はかなり突出した能力を持つ人材が多く、その中でも上澄みの生徒は日本を超え、海外でも有名な人物がいたりする。(特に数少ない音楽と情報。この二つ学科の上澄みは世界でトレンド入りするような曲を作る猛者と世界規模のハックイベントでTOP10入りするような猛者がいる。)
さて、そんな学園に着いた三人は中央棟の下駄箱で上履きを履き、自分たちの教室がある二階へ向かう。
そしていつも通り注目を浴びる浅木。浅木はこの学園の中でも上位に入る美人である。
一ヵ月におよそ三人の男子に告白されるがこっぴどく刺々しい言い方で振るため、髪色とかけて生徒間では「中等部の栗姫」と呼ばれている。(まぁ、髪色は栗というよりモンブランのほうが近いが)
ちなみに双子の優は優で女子に人気だ。なんでもスポーツで集中している時の顔が別人なくらいにカッコいいらしい。
修矢はというと……
「チッ、何であんな奴が浅木さんの近くにいるんだよ。」
「優様の隣を歩いているあの男子……なんなのかしら?」
人気者二人の近くにいるということで話したこともない男女からは妬みと疑問の視線を向けられている。
話していない男女には、だ。
「修矢、おはよう!」
「天遊君、おはよう。」
話したことのある男女からは性格のよさと人徳から、嫌われていない。むしろ友人として好まれているくらいだ。
喧騒に塗れた廊下を過ぎ、彼らは彼らのクラス、「C3-A」に入る。
誤字脱字報告、批評(批判じゃないよ)コメント、よろしくお願いします
意外と気に入られてる修矢君。
次回は3月25日の18時です。