番外編:天遊修矢の誕生日
「お兄ちゃん、誕生日おめでとう!」
その日、修矢が目を覚ますと彼の妹、天遊百合がベッドの横に座っていた。
「おはよう、百合。ありがとう。でもちょっと突っ込ませて」
「なに?」
「なんでこう……シュールな状況なんだい?この構図、明らかに人を看取る時の構図じゃない?」
「……そうかも」
「気付いてなかったのか……」
それは単なる日常。理知的な百合が偶に見せる天然なところに苦笑する修矢。
ただ、いつもと違うことが一つだけ。それは今日が修矢の13歳の誕生日だということだ。
「それは兎も角、今日は帰ったらパーティだよ!今から楽しみ!」
「……そうだね」
寝起きだからか、反応の鈍い修矢。
「あ、今日は浅木お義姉ちゃんと優くんも呼ぶから!」
「……そうだね」
浅木と優で呼び方が違うのは、優がそう望んだから。
今年の夏、優が百合に告白し、付き合い始めた。
浅木を姉と呼ぶのは純粋に年が上だからなのか、将来そうなるであろうことが分かっているのか。
「……ん?優と浅木呼ぶって言った?」
脳が回り始め、聞いてなかったこと聞いていたことに気付いた修矢。
「うん、呼ぶよ」
「あ、そうなんだ……え?ん?ん~?」
「どうかした?」
「……これって僕が知っていいことなの……?」
「うん、今日は少し特別なところでパーティだから!」
「特別なところ……?」
⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔
その日の夜。
「今日はありがとうございます、車も出してくれて……」
「いいのよ、浅木ちゃん。これからも末永く修矢のこともよろしくね?」
「俺からも言わせてください、ありがとうございます、我がままを通してもらって……」
「優くんも別に気にしなくていいのに。優くん、百合は最近はどう?迷惑かけたりしてない?」
「ちょ、お母さん!」
修矢たちは修矢の母、天遊 咲の車に乗ってとあるところに向かっていた。
修矢は目隠しを付けられている。
音だけが頼りのなのだが、隣では優と百合がいちゃついてるからか、周りの情報に気付けない……
「着いたわ、うちの修矢をよろしくね」
「はい。それじゃあみんな、外に出るわよ」
「「りょうか~い」」
「修矢、どこだか分からないわよね?」
「うん、優と百合がいちゃついてて曲がったのかどうかもあんま分からなかったから……」
「よし、隣に優と百合ちゃんを置いたかいがあったわね」
「作戦だったのかい!」
「いや、半分くらい素よ」
「あ、素だったんね」
閑話休題
修矢に付けられていた目隠しを浅木が取り外す。そして上の方を見ると……
「………」
修矢は絶句した。
そこにあったのは星空。
都内でも見ることができるようになった星空。
けれど、そこにあったのははるか昔に見れたような、周りの光を伴わない、そんな美しい、星空。
星が好きな修矢にとって、その光景は……
「最高の誕生日プレゼント、だろ?」
その通りだった。
その後、修矢たちは夜遅くまで星空を見入っていた。
……そしてその数か月後、修矢の家族は行方不明になったのだ。
誤字脱字報告、批評(批判じゃないよ)コメント、よろしくお願いします。
ということで修矢くんの誕生日です!祝ってあげてください!
11月は色々やってみようかなぁ。
次回は10月30日 18:00を予定しています。