28:特訓と勉強⑤
なんであんな顔してんだ……?と考える修矢。
そしてその答えは昼休みに話になった。
「はぁ~!?範囲の大半を覚えていない!?」
「ははは……最近、少し色々とごたついててね……忙しすぎて復習するの忘れてた……」
(そういえば神であって脳のキャパが無限でも理解力は必要だって言ってたっけな……)
そう、蝎奈は学園へ転入してから、修矢と星夢ノ戦関連の諸事情でほとんど脳のキャパをそっちに回していたため、全く復習の類ができていない。
「それじゃあ神坂の家で勉強会でもしたらどうだ?どうせなら私が講師役として参加してあげてもいい。」
「……いつの間にいたんですか、雪先輩。」
「まったく、天遊は酷いな。ずっとここにいたぞ。」
「それはそれとして、なんで私たちの家に貴女を招待しなきゃいけないのよ。勉強会という名目があるから蝎奈は分かるけれど雪先輩、学年の違う貴女は本当に招待する理由が分からないわ。」
「……別によくね?みんなでできた方がいいだろ。それに確か下弓先輩って学年TOPでしょ?勉強会の手伝いになるし俺は賛成だけど。」
「僕も優と同意見。といっても僕は居候だからね、神坂家の住人の二人が最終的には決めてくれ。」
「神坂兄と天遊はこう言ってるぞ。お前はどうだ、神坂妹」
「……ゔ~」
ぶっちゃけると、浅木も間違いなく勉強効率が上がるのは間違いないと思っているので、その面では大歓迎だ。
しかし、しかしだ。
恋敵なのである。彼の一番になるために、他の誰かが彼の一番にならないように、彼の近くに恋敵である雪を置きたくないという思いがある。
それに、浅木からすれば、もう一人の恋敵である蝎奈は、告白というステージに上っていて、振られたとはいえ、修矢にとって無理にでも意識してしまう位置にいる。
これ以上恋敵の立ち位置をよくさせないためにも、この勉強会は止めておきたい。
が、しかし。ここで浅木は一つのミスに気付く。
『それはそれとして、なんで私たちの家に貴女を招待しなきゃいけないのよ。勉強会という名目があるから蝎奈は分かるけれど雪先輩、学年の違う貴女は本当に招待する理由が分からないわ。』
自分の発言に、蝎奈は来ていいと実質言ってしまっている。
この勉強会で蝎奈と修矢の距離感が近づくと、より浅木の恋の勝利が遠のく。
しかし、この【蝎奈は来ていい】ということは言ってしまった以上、もう撤回はできない。ならばこのとき、どうすればいいか。
ヘイトの分散である。
「分かったわ。一応母さんと父さんの許可が必要だけど、明日、ちょうど休日だし勉強会を開きましょう。」
「なんで上から目線なんだよ。」
「うるさいわ、優。」
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来週の投稿日は野球観戦に行きます。
次回は9月18日 18:00を予定しています。