03:「今」の日常‐2 少し変わったニュース
「その目は何よ、お母さん。」
浅木がプリプリしながら夜宵に問いかける。
「ん~?別に~?」
夜宵はのらりくらりと返す。ニヤニヤしながら。
「はぁ~…もういいわ。優、食べ終わったならどきなさい。食べ終わってなくてもどきなさい。」
「見りゃわかるだろ。食べてるだろ。なんでどかなくちゃいけないんだよ。」
「だって……それは…その…修矢の…隣で…食べたいんだもん…」
デクレッシェンドがかかっていく浅木の声。
「なに?聞こえない!」
「……っ!っもういいっ!」
それに対して首をかしげる修矢。その後、修矢を優と挟むようにして座った浅木と朝食をとる。
「テレビつけるぞ。」
葉がテレビをつける。みんな既に朝食を食べ終えていたのでテレビでやっているニュースを見る。
『2115年4月24日、朝のニュースです。深夜2時に東京都天桜町の空桜公園にて…』
「あ、ここのニュースよ。」
浅木が呟く。確かに彼らの住む町、天桜町に関するニュースである。自分の住んでいる町の話題がニュースで報道されるは大分珍しい。
もっとも、今回のニュースは自分たちの町で起きてほしくないものだったが。
『体長50㎝にも及ぶ、サソリが発見されたとのことです。』
「「「ファッ!?」」」
次の瞬間、テレビに流れたのはとてつもない大きさのサソリが近くの空桜公園から続く森から顔を覗かせているVTRだった。それと同時にテレビから報道の続きが流れる。
『なお、このサソリは未だに捕獲されていないため、近隣住民の皆様は注意して生活してください。それでは、次のニュースです。大人気アイドルグループ、「フラクト」のライブ…』
「ひぃ~…怖いわ~……」
浅木は身をすくめて、そう言う。それに対して修矢は少しばかり残念さを感じさせる声を出した。
「そうだね、でも僕たちには関係ないんじゃないかな?」
「それもそうだな!修矢、お前も今日の持ち物まとめてないだろ!一緒にまとめようぜ!」
「了解、優」
優の軽快な言葉に修矢は返事をし、彼らは荷物置き場(修矢と優、浅木の持ち物がまとまっている部屋)
に行き、時間割を確認した。
「え~と、今日の時間割は…国、数、道、英…体…社……」
「…正気?」「残念、マジだ。」
優の言った今日の時間割で絶望する修矢。
なぜ、今日の時間割がそんなに嫌なのかというと、一時間目の国語の正木先生はネチッこい言い方をしてきて、四時間目の英語の矢子方先生で、お昼を挟んで五時間目の体育で体力を奪われた挙句、歩く睡眠導入剤こと社会の番上先生の授業、ということになるからだ。
当然、寝れば怒られる。
担し、The・理不尽の極みである音楽の争葉谷先生の授業がないため、キツイことには変わりないが、ギリギリ気分は上げられる。(上げれるように見えるだけ。)
修矢にとっては得意かつ、先生がいいかつ、好きな理科の授業がないのもキツイ。
二人は重い手を動かして準備を終わらすと、時計を確認した。
時間は7時を示していた。
「あ、もうこんな時間だ、行こうぜ修矢。」
優はそう言って重い足取りの修矢を連れて部屋を出た。
二人は玄関で「行ってきます」と挨拶をしてエレベーターを待つ。
「…まだ慣れないな、朝からエレベーターに乗るのは。」
もともと一軒家に住んでいた修矢は、優達と一緒に暮らすようになってからも朝からエレベーターに乗ることに慣れていなかった。
不意に声がした。
「まぁ、もうしばらくしたら、慣れるんじゃないかしら?」
「「うわっ!」」
驚く修矢と優。彼らは横を見るとと、そこには浅木がいた。
「お前、いつからそこにいた?」
そう優は浅木に聞いた。
誤字脱字報告、批評(批判じゃないよ)コメント、よろしくお願いします。
これは私事なんですが、今日、学校の卒業式でした!
突然現れた浅木。これは伏線だったり……
次回は3月22日18時です。