21:交換条件
その後、彼らは屋上に向かったのだが。
ジトーーー
二人は雪と浅木から、とてつもないジト目を向けられていた。
修矢はいたたまれない様で、ずっと優の方を見ていた。
それに対し、蝎奈は「ごめんごめん」と言いながら、雪と浅木と話していた。
「?どうかしたか?」
「ん、別に?」
「あ、そう。なんかすごく暗かったもんだから。」
優は修矢に声を掛ける。
「……ねぇ、優。」
「ん?」
「もし、自分には荷が重い、って思うようなことを頼まれたらどうする?」
現状、修矢に蝎奈の誘いを受けるつもりはなかった。
その理由は言葉の通り、荷が重いからだ。
疑問もあるだろうがそれ以上に、荷が重いのだ。
「そうだなぁ……」
優は考える。
「俺なら、自分が本気で欲しい何かをくれるならやるのかもしれないな。」
「交換条件ってこと?」
「そう、それをやる代わりに自分の一番欲しいそれをもらうぞ、みたいにな。」
「そっか……」
(それじゃあ、僕は何が欲しいのだろうか………)
脳裏に蘇るのはあの日々。
『お兄ちゃん!早く行こう!優くんたちが待ってる!』
『ああ、そうだね。』
『やっと来たか!』
『百合ちゃん、どこ行きたい?』
(間違いない。僕が一番欲しいのは……)
そこまで考えたタイミングで、学校のチャイムが鳴り響く。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そしてその日の夜。
眠りについた修矢は、気付けばそこ……神夢場にいた。
「決めてきて……くれたかい?」
蝎奈は微笑みながらそれを聞いてきた。
「その前に一つ、聞いていいか?」
「何かな?」
修矢は一息つくと、言葉を続けた。
「君は、もしも僕が参加したとしたら、僕に対して何かできることがあるのかい?」
「……交換条件、ってことかな?」
「ああ。そういうことだな。」
「………」
そこからしばらくして、蝎奈は口を開いた。
「ごめんあんまりできないかもしれない。試しにその条件を教えてもらってもいいかい?」
そして、修矢は間髪入れずにその条件を言った。
「僕の家族、なぜ蒸発したのか、今どこにいるのか。その情報だけでもいいから欲しい。」
蝎奈はその言葉を聞いて、小さくうなずいた。
「それなら多分大丈夫だと思う。」
「それじゃあ……」
この瞬間、修矢は覚悟を決めた。
「僕はあなたの協力者となり、星夢ノ戦に出ることにするよ。全てが終わったら、その情報が欲しい。」
彼はちぐはぐな口調でそう言った。
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もうすぐでスマホを手に入れられる。
次回は7月17日 18:00を予定しています。