20:運命で定められた決まり
なぜ口パクで言ってたことが分かるのだろうか。
言ってたというよりも声が頭に響ていた気がする……
などと修矢が考えていた昼休み前最後の授業。
「……で、この式だが。おい天遊、答えはいくつだ。」
「え、あ、はい!えっと……24x²+67ⅹ+45=(3x+5)(8x+9)です。」
「……そうだ。ということでこれが二学期末にやるたすき掛けを用いた因数分解だ。二学期末から他の学校での高校の範囲となる。よく予習するように。それと天遊、上の空になるな。」
少し驚いたような顔をしたかと思うと、すぐ呆れたような顔をした数学教師、坂山 解。
彼はついさっきまで二次方程式の因数分解についての話をしていたのだが、その最中に二学期にやる予定のたすき掛けの内容に触れていたのだ。
その最中に修矢が上の空になっていることに気付き、冗談交じりの意地悪でそのたすき掛けを解かせようとしたらとんでもない速さで答えが返ってきたため、驚いたのだ。
しかし、上の空状態だったのは流石に注意した方がいいかと注意だけをしてすぐに黒板に向かった。
そんな状態にだったとはつゆ知らず、なんか解く必要のなかった問題を解かされた修矢は。
「……へ?」
正に狐につままれたような顔をしていた。
この時、隣の貯雨恵を含めた教室内の四人が笑ってたことに修矢は知らない。
そして始まった昼休み。
「ごめん、さっき先生から修矢くんと一緒に手伝ってってお願いされたことがあって……修矢くん借りていくよ。」
「「は?」」
「それじゃ!」「え、ちょ、ま、」
修矢は適当な理由を付けられて蝎奈に連れ去られ、非常階段に連れてかれた。
この時、浅木が追っかけてくるんじゃないかと思った読者諸君に伝えておくと、あまりにも不意打ちだったため、浅木は硬直してしまい、修矢と蝎奈が見えなくなるタイミングまで動き出すことが席なかったのである。哀れ。
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そして二人は南棟の非常階段に着き、蝎奈は話を始める……前に、修矢が疑問を突き付ける。
「どういうことなんだ、なんで僕は誰かに昨日の夢を話せないんだ。」
それを聞いて少し蝎奈は微笑むと、悪戯っぽく声を出した。
「それはね、そう運命が決まってるからなんだ。」
「運命?」
「そう運命。あの神夢場での出来事は他言無用になるようにね。」
「な、なんで……」
「そりゃ決まってるでしょ。この世界でもしも神の存在を知られたらそれは信じられなくても”そう言っていた人がいる”っていう事実は残ってしまうからね。しかも、とてもリアルに言うものだからみんなが想像つくようなことなわけだし。それが原因でこの世界がパニックになるとかもダメだしね。」
「……そう。」
「それじゃあ、また今夜。それまでにどうするか決めといてくれないかな?」
彼女は申し訳なさそうな顔をしていた。
誤字脱字報告、批評(批判じゃないよ)コメント、よろしくお願いします。
中3で高1の範囲をやるらしい、中高一貫では。
次回は7月10日 18:00を予定しています。