16:動き出した非日常
そんな女子会も終わり、午後の授業を終えて放課後。
「蝎奈さん?」
下駄箱で靴を取り換え、いつもの三人で帰ろうとしていたその時のこと。蝎奈が自分たちと同じ方向に帰ろうとしていることが分かる。
「あっちって天桜公園方面だよな?」
「私たちと同じ方向なのかしら?」
「そうよ。」
「「「!?」」」
三人で話をしていたら前にいたはずの蝎奈は消えており、いつの間にかに修矢たちの後ろに移動している蝎奈。
「あら、びっくりした?」
「びっくりしたわ……なに、あなた忍者の末裔か何か?」
「いや、もしかしたら前世がチーターだったのかもしれないぞ。」
「女の子相手にそれはないんじゃないかな、優……」
修矢は蝎奈の方を見ると、少しキョドる。
「あ、修矢君、あまり昼休みの告白は気にしなくていい……けど、そんなの無理よね。まぁ、できる限りでいいから気にしないでほしいわ。私自身、どうかしていたと思うし……」
「……そうなの?」
「ええ、流石に焦り過ぎた節があったと思ったのよ。」
「?何を焦っていたんだ?」
「それは……」
「はいはい、ストップ。」
浅木が少し頬を膨らませてそんなことを言った。
「蝎奈、何があるのかは知らないけど、私とこのバカを蔑ろにするのは流石にやめてほしいわ。」
「おい待て、バカってなんだ。バカって。」
「あら、血縁の心情一つ読み取れない馬以下のバカとは貴方のことよ神坂 優。」
「おい、そのバカって馬以下って意味なのかよ。」
「あら失礼。それじゃあ貴方と比べられる馬がかわいそうね。」
「そっちじゃねぇだろ!」
「なに路上で兄妹喧嘩してるんだか……」
浅木と優の喧嘩に呆れる修矢。そして天桜公園の前を通る四人。すると蝎奈は公園の方を指す。
「それじゃあ私、こっちだから。」
「え、そっちは公園だけど……」
修矢がそう言うと同時に優は修矢と同じような疑問の顔を、浅木は胡乱な目をしている。
「それに、そっちの公園の森にはサソリが出たのよ。今のところ捕獲の話も聞かないし、ほんとになんで行くのよ。」
「公園抜けた方が早いのよ。だから私はこの道を通るの。」
「ああ、なるほど。でもほんとにサソリは出るのよ、私たちも会ったし。」
「………知ってるよ。」
ボソッと蝎奈が呟く。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない!大丈夫だから。絶対に。」
「そこまで言うのなら……」
修矢が反応し、確認をとる。
「それじゃあまた明日な、蝎奈!」
「じゃあね蝎奈さん。」
「また明日。」
「それじゃあね。」
そうして蝎奈は森の奥に向かっていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふふっ!やっと見つけた!今日こそは、話せるよね!」
蝎奈は森の中でそう叫ぶ。
「ん~、多少はこちらの好意を受け取ってくれたはず!話すのが楽になるといいな…」
そんな訳の分からないことを捲し立てる蝎奈。
「ごめんね、修矢君。利用することになっちゃうけど、許してね?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そしてその日の夜。
修矢は眠りにつくと、いつも通りあの誰かに呼ばれる夢を見る。
「もしも……もし……も~しも~し」
でも今日は違った。少しずつ鮮明になっていく声。消えていく霞。
「も~しも~し、修矢君?聞こえてる?」
そこにいたのは間違いなく、今日会ったばかりの、けれども自分を確かに助けてくれた……天道 蝎奈がそこにいた。
「なん……で……」
「あ、聞こえてた!それじゃあ、まず最初に単刀直入に要件を言おうか!」
蝎奈は口を開く。
「天遊 修矢君。君には、神様になってほしい。」
その日、確かに修矢の今までの日常は壊れた。
誤字脱字報告、批評(批判じゃないよ)コメント、よろしくお願いします。
単純な学園モノに見えてきた頃にファンタジーパンチ!
次回は6月12日 18:00を予定しています。
カクヨムでも小説投稿を始めました!更に新作の投稿も始めています!
吹雪の奥の最強夫婦、近隣国家の学園に通う (カクヨムオリジナル。URLはノートより)
転移したら記憶が無くなったので自重せずに生きていく ~自重?なんでしてたんだっけ?~(なろうの新作。不定期投稿。)
不意に新作を出すかもしれないので、温かい目で見ていてください!