12:昼食時の乱入者‐2
それからの争葉谷先生の転入生いびりは酷かった。
教科書を持っていないことの配慮を忘れた(自供)ために蝎奈に教科書を使わなければいけない問いを名指しで答えさせようとし、その後に教科書を持っていないことを改めて伝えるとそのまま逆ギレしたり。
そして合唱の時もパート分けを碌にしなかったくせにそのまま歌わせようとして、音がずれているとキレる。同時にクラス全員が怒られたために蝎奈は後ろを見るとペコリと謝礼した。
ちなみにクラスメイトはまったく気にしていない。怒りの感情の矛先は争葉谷先生である。
閑話休題。
そして時は流れて昼休み。
いつも通り(あれ以降、修矢、優、浅木、雪の三人は東棟の屋上で昼ご飯を食べていた。)に三人は屋上へ行き、そこには雪先輩がいた。
四人は昼食を食べながら会話を弾ませていた。
「で、争葉谷先生のせいで5分間授業が延びたんですよ。ひどすぎませんか、あの教師。というよりもなんであの人「教師」なんてやってるんですか?」
「あのクソ先生は未だにクソだったか。まぁ、うちの学校の音楽科の人数が少ないのは間違いなくあの人のせいだろうね。実際は音楽科の先生は別の先生だし、びっくりするほどいい先生だから音楽科に進んだ生徒の大半はそのことを知ってる人だって。」
「あれ、雪先輩って音楽科でしたっけ?普通科では?」
「ん~、私の幼馴染が音楽科なの。ほら、あの音姫って言えば分かるかしら?」
「え、衿宮先輩ですか!?」
「あ~、情報科の舵尾先輩と付き合ってるあの人か。」
「うん、そうそう……なんで知ってるの!?史会と舵尾くんの関係知っているのって私以外だと舵尾くんと同じ生徒会の佐山くんくらいのはずなのに……」
「あはははは……それはですね……」
衿宮 史会、舵尾 永大。史会は浅木と同じようにこの学校の中で大分上位の美しさを持つため、おとぎ話の乙姫と音楽科で有名な努力家であることを捻って「音姫」と呼ばれる人物である。
一方、永大は普段は黒髪を下ろし、眼鏡をかけている情報科の生徒。しかし、彼もまた努力家で全国規模のハックイベントでファイナリストに選ばれるほどの実力を持つ。あと、前髪を上げると普通にイケメン。
そしてこの二人、実は付き合っている。去年の春ごろにとあるイベントで修矢は永大の前髪を上げた時の面を見ていて、夏休みに見かけたときに史会と一緒にデートをしているところを見かけたのだ。
修矢は春の時の縁で永大と仲良くしていたため夏休み明けに聞いたら「頼むからなにがなんでも秘密にしてくれ」と懇願された。
ちなみに佐山 出糸は生徒会会長。こちらは永大の幼馴染。去年の生徒会選挙で圧倒的な票数で生徒会長に選ばれたこの学校一の人気者である。
閑話休題。
去年の出来事を修矢は雪に話すと雪から「縁とは不思議なものだねぇ」と笑いながら言われた。
「そう言えば天道さんって上級生の間でも有名なんですね。」
「うん、なんでも『中等部三年に人間離れした容姿を持つ美人が転校してきた~』ってね。」
「へ~」ガチャッ
四人で話に花を咲かしていると人気のない東棟に来訪者が来た。
「えっと……昼ごはん、ここで食べてもいいかな?」
現れたのは今話題の転校生、天道 蝎奈だった。
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GW、いかがお過ごしでしたか?
次回は5月15日 18:00を予定しています。