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第3話 聖女と魔女とアレ

 四年前のことです。


 家業の方も大分、落ち着いてきたこともあって、お父様と継母(おかあさま)が視察を兼ねた旅に出ました。

 私とユリアナで考えた両親へのプレゼントでした。

 仕事ばかりで息抜きが無い二人にちょっとだけでも休んでもらいたかったから。

 ところがそれにすら、さりげなく仕事の要素を入れてしまうところがお父様らしいところかしら?


 海賊を生業とするデ・ブライネ家らしく、南にあるリゾート地まで船の旅を選んだお父様と継母(おかあさま)の姿を見るのがまさか、最後になろうとは思ってもいなかったのです。

 見つかったのは二人が乗船したデ・ブライネ家の紋章が入った船の残骸だけ。

 損傷具合から、これまでに遭遇したことの無い嵐か、大型の海棲魔獣に襲われたのだろうと断定されました。

 捜索は半年間続けられましたが、一切の手掛かりを得ることも出来ずについに打ち切られたのです。


 我が国では女性による爵位の相続が認められており、相続権を持つ者が私だけだったことから、私がデ・ブライネ辺境伯の名を継ぐことは確定事項でした。

 当時、十四歳だった私に表立っての中傷はなかったものの風当たりは強く、辛い思いを抱えていたのは事実です。


 そんな時、防波堤となって助けてくれたのがお祖父様――前国王ヒエロニムスでした。

 お祖父様は身寄りをなくした私とユリアナを庇護してくれただけでなく、代理辺境伯という肩書で私の名誉も守ってくれたのです。


 しかし、元気だったお祖父様が体調を崩すようになり、床に就くようになりました。

 別れの日が近いと覚悟はしていたものの実際に衰弱したお祖父様の姿は見ているだけでも辛いものでした。


 そして、三年前。

 お祖父様は天に昇られたのです。

 朝から、雨が降り止みませんでした。

 まるで天が悲しむかのように。

 その日、私はお祖父様との最後の約束として、リューク・アッケルマン第五王子と婚約することを決めました。


 現在、私とユリアナは海賊だけではなく、諸侯からも聖女と魔女などという妙な二つ名で呼ばれ、密かに恐れられています。

 私達は両親がいつ戻ってきても恥じることの無いようにとただ、ひたすらに邁進していただけなのですが……。

 結果は後から、勝手についてきたものに過ぎません。


 ところが婚約者となったリューク殿下は結果は決まっている物なので何もしなくてもいいと考える残念な人だったのです。

 お祖父様の最後の願いが殿下を婚約者として、婿に入れることだったのは殿下の残念な気質がデ・ブライネ領で少しでも改まることを期待したものなのでしょう。

 しかし、一年が経っても彼は全く、変わりませんでした。

 二年経つ頃、確かに変わりました。

 それも悪い方向に……。

 三年が経過し、私が正式に辺境伯となる年です。


 色々と足りない殿下ではありますが、最低限の節度くらいは守っていただけると思っていた私が甘かったのでしょうか。

 まさか、目の前で最悪なことをするとは思ってもいなかったのです。


 さて、どうしましょうか?

 私以外は皆、やる気が十分なので宥めないと血を見そうなのですが……。

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