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第18話 平穏でもない日々

 ユリから、事の真相を聞きました。

 リューク殿下の婚約破棄事件の際、彼女がここを離れた幽霊船団(ゴーストシップ)ですがそれすらもカスペル殿下の差し金だったのです。


 時に訪れ、災厄をもたらす幽霊船団(ゴーストシップ)はデ・ブライネから、遠く離れたヘルヘイムから、流れてくる死者の操る大型船のことでした。

 こちらから、手を出さない限りは大きな被害も出ないので迂闊なことを船員が仕出かさないように睨みを利かせられるユリが出ないといけません。

 これをカスペル殿下に悪用された訳です。


 デ・ブライネの誇る大型船にして、旗艦『白き人魚姫(アルブス・シーレーン)』で出撃したユリが出くわしたのは幽霊船団(ゴーストシップ)でも何でもない海賊船団だったそうです。

 いかに海賊船との戦闘に特化した大型の戦闘船舶であるアルブス・シーレーンとはいえ、無傷では済まされない圧倒的な物量差にユリもすぐに帰れそうにないと悟ったのだとか。


 ところがここで思わぬことが起こったのです。

 アルブス・シーレーンではない何者かによる砲撃により、海賊船団が見る間に沈んでいったとユリが興奮して、話してくれました。

 水平線の彼方から、圧倒的な火砲で海賊船を制圧していく様子にユリですら、目を奪われたそうです。

 何とか、確認出来たのは掲げている旗の紋章だけで赤地に黒い蛇が描かれていたとか。

 伝承によれば、その紋章を使うのはヘルヘイムの女王だったと思うのですが、思い過ごしでしょうか?


 ともあれ、ユリは思わぬ援軍もあって、思っていたよりも早く帰還出来たのでした。


 ただ、セバスとブランカが私の傍を離れたのはカスペル殿下のせいではなかったのです。

 クルトが予め、手を回してタイミングを見計らうように相談していたのだとか。

 私に教えておくと顔に出やすいので秘密にしておいたそうです。

 そのことに抗議すると「ほら、そういうところですよ。頬を膨らませて、リスじゃないんですから」とクルトに額を弾かれました。

 私の扱いが微妙に酷い気がするのです……。




 しかし、それ以上に私を悩ませるのはエルヴィン殿下です。


「殿下はお帰りにならないのですか?」


 屋敷のバルコニーで昼下がりに優雅なお茶を楽しむのはいいのですが、なぜか、エルヴィン殿下も同席しているんですよ。

 どうなっているんでしょう?


 むすっとした表情を隠そうともせずに脇に控えるブランカと笑うのを堪えているように見えるクルト。

 二人は護衛代わりとして、控えてくれているのです。

 いくら、相手が第二王子とはいえ、何かあったら、いけませんからね。


「ああ。帰らなくてもいい許可は取ってあるんだ」

「そうですか」


 会話が続きません。

 そもそも会話をしたいと思っているのかも分かりません。

 目が合うと逸らされるのではやりにくくて、仕方ないです。


 せめて、ヨハンナ殿下がいてくださったら、もう少し、何とかなったのでしょうが……。

 どうしろというのでしょう?


 クルトはついに笑うのを我慢するのを止めたみたい。

 ついには吹き出して、隣のブランカから刺さるような視線を浴びせられても全く、動じないのは尊敬に値しま……せん。

 冷めて、既に味の分からなくなった紅茶を口に運び、溜息を吐きたくなるのを我慢して、救世主(ユリアナ)が戻ってくるのを願うのでした。

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