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第15話 兄弟王子相克

「この私をなめるなよ」


 一歩一歩、ゆっくりとこちらへと歩みを進めるカスペル殿下の両手に細身の優美な長剣が現れました。

 あれはもしかして、魔法剣!?


 魔力によって生み出された実体を持たない不思議な剣を使う魔法です。

 制御が難しく、一本を出現させるのでさえ、実現させた者が片手の指で足りる人数しか、いないと言われていたような……。

 それを二本、軽々と出現させるとはカスペル殿下の力は強力な魅了だけではないということでしょうか?


「ユリ。気を付けて」

「分かってるって!」


 言うや否やもう床を蹴って、ユリはあっという間にカスペル殿下の間合いに入っていました。

 彼女は小柄な体格を不利とは思わずに逆に生かして、戦う子です。

 あれは殿下の顎を狙っているのね。


 右の拳が唸りを上げて、殿下の顎だけを狙っているようです。

 全く、容赦がないんだから。

 ユリの必殺、しゃがみこんでからの加速を付けたアッパーカットでした。


「甘い!」

「やるわね?」


 残念ながら、カスペル殿下の顎は砕けなかったようです。


 ユリの金色の炎を発する拳をカスペル殿下は左の魔法剣の柄で止めるという器用な芸を見せてくれました。

 それだけではなく、動きが止まったユリを牽制するように右の魔法剣を彼女目掛けて、振っていたのです。


「待て……ユリアナ嬢。ここは俺に任せてくれないか」


 再び、間合いを取って、睨み合ったまま、動きが取れない両者に向けて、ようやく立ち上がったエルヴィン殿下が放った一言に場が沈黙に包まれました。

 表情を見る限り、私の解いた魅了の呪いによる副作用でまだ、身体に違和感があると思われるのですが……。


「兄上。そんな体で何が出来るのですか? おとなしく、そこで寝たままの方が幸せだったのではないですか?」


 リューク殿下と同じ顔なのにそうとは思えないほどに醜悪で邪で歪なものがカスペル殿下の表情に浮かんでいました。

 心が影響するというのは本当なのかもしれません。


「兄として、男として、お前に負ける訳にはいかんのだ」

「ああ。そういうことですか」


 どういうことですか?

 頭の中に疑問符が浮かんでは消えていき、ユリとヨハンナ殿下に助けを求めるように視線を向けても、やれやれという表情をされます。

 何でしょうね。

 私は仲間外れなのでしょうか?

 分かっていないのはどうやら、私だけのようですし……。


「かかってこい。この脳筋め。お前の真っ直ぐなところが昔から、嫌いだったんだ」

「くっ。カスペル……お前。そうか。もう無理なんだな」


 対峙する王子殿下二人の男の勝負が始まるので、ユリもお手上げとばかりに両手を上げています。

 ユリも仲間外れになったから、私の仲間ね♪


 ですが、エルヴィン殿下の身体が心配です。

 祈るだけの私ですが祈らせていただきましょう。


 どうか、あの方に力を……。

 そして、どうか安らかな心を取り戻せますように……。


 ただ、祈るだけの私をお許しください。

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