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第10話 味方は急に降ってくる

 さぁ、始まりました世紀の一戦。

 ……などと言っている場合ではありませんね。

 中々に凄惨な現場です。


 暗殺者と思しき黒い一団は武器を構えて、一斉にクルトとファン・ハール卿に襲い掛かってきたのです。

 その足並みの揃え方は見事なもので牢獄という狭い空間を最大限に利用した戦い方とも言えます。

 クルトのロングソードやファン・ハール卿のブロードソードは刺突・切断のどちらにも使える武器ですが、リーチが短い短剣を手にした暗殺者の方が戦いを優位に運んでいました。

 狭いので逆に長さがネックになっているのです。

 「大丈夫?」と声を掛けるのも邪魔になるでしょうから、おとなしくしておきましょう。


「中々、厄介なことで」

「ええい。泣き言を言うような者はファン・ハール家にいらんぞ。体を動かせ」

「へいへい」


 二人の様子を見ている限りはまだ、余裕があるようですがあちらは数が多いので難しいかもしれません。

 どうしたものでしょう?

 ユリだったら、「あたしに任せて!」と真っ先に殴りかかって、既に片付いている気がしますが……。

 私が出来ることは()()ことだけ。

 この場において、出来ることはないに等しいわ。


「皆さん。お困りのようですね。魔法の力はいりませんか?」


 その時、場にそぐわない飄々としていながらもどこか、温かい気持ちにさせてくれる涼やかな声が響きました。

 この声は……。


「第四王子ヨーゼフ! 呼ばれてないけど、ここに参上!」


 どこから、現れているんですか?

 クルトとファン・ハール卿も慌てていますが、暗殺者も意表を突かれたようでした。

 何もない狭い牢獄の天井から、いきなり白いローブを着た小さな影が文字通り、湧きました。

 驚かない人がいたら、逆に驚きますけど!

 さすがは魔導師と言うべきかしら?


「いっきますよ~。ねぇむれ~、よいこよ~! ほら~、眠りの雲(スリープ・クラウド)


 ええ? それで本当に発動するんですか?

 半信半疑ではありましたが、ふわふわと宙に浮いたまま、暗殺者に向けたヨーゼフの殿下の杖の先から、寒空の吐息のような白い煙状のものが放出されました。


「おいおい。いきなりはないでしょうよ、殿下」


 咄嗟に口を袖で覆っていたクルトは免れたようですが、ファン・ハール卿と暗殺者は見事に直撃したようです。

 バタバタとまるで寸劇のように倒れていきました。

 すごい威力ですね……。

 そして、相変わらず、無茶なことをなさる殿下だこと。

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