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第1話 デ・ブライネ家の姉妹
デ・ブライネ家は大陸の東方に領地を有し、港湾都市ランマトワを擁する辺境伯である。
古代の地殻変動が生んだ特殊な地形で知られる地だ。
入り組んだ入り江や湾が複雑な構造を形作り、大小様々な小島が点在している。
それは豊かな自然環境を育み、恩恵を与えてくれるとともに災厄も招いていた。
海賊である。
複雑な地形は彼ら、海賊が隠れ家を作るのに最適な地でもあったのだ。
この厄介な海賊を抑えるべく、東の海に睨みを利かせる重要な役割を担うのがデ・ブライネ辺境伯である。
それゆえにデ・ブライネ家は王から、私掠許可証を拝領し、海域を荒らす賊を駆逐している。
毒を以て毒を制す。
つまり、デ・ブライネ家もまた、海賊なのだ。
そんなデ・ブライネを象徴するのが二人の女性の存在である。
慈愛の白銀の聖女と怜悧な黄金の魔女。
美しき二人の義姉妹を巡る物語が今、始まる。