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文化棟2階1番奥

 俺こと竹本爽太たけもとそうた、中学一年生の好青年で社会の模範的な存在(自称)とも言えるこの俺が、今社会的に終わりを迎えようとしていた。


 春奈が穂花センパイと呼んでいた上級生が、楽しげに笑んでいた。

 

 俺は備品庫の床に座り込んだまま、穂花センパイを見上げていた。

 とても美人なセンパイである。大人びた雰囲気で整った顔つき。春奈の女の子らしい可愛いらしさとはまた違う、お姉さんっぽい美人系といった感じだ。しかも……、スタイル良し、春奈よりもでかくない? センパイのパイ。


 そんな美人上級生である穂花センパイの、笑みとパイ(カッターシャツ越し)を眺めれるという幸運が訪れたわけなのに、俺は全身に嫌な緊張感で固まっていた。だってさ、お、俺……、春奈のバストに、自分の顔を、


 ニヤリッ。


穂花センパイは意味深な笑みを強めた。


 うおっ!? ぜっ、絶対見てたよっ!! この人!!


 俺の顔が熱くなったのが分かった。


 そ、そりゃそうだろ! いくら幼馴染の春奈とはいえ、その、じょ、女子のバストに、か、顔を当ててんだから!! てか埋もれていたけどもっ!! でもそれは春奈が俺に覆いかぶさるようにこけたからであって、わざとじゃない、って!?!?


 穂花センパイがスマホに耳を当てていた。


 俺の顔から一気に血の気が引く。


 警察→事情聴取→裁判→泣く幼馴染の春奈→それでも俺はやっていない→有無を言わさず有罪→牢屋(完)


 もはや……、これまでか……。


「今は部室かしら? うんうん、大丈夫、落ち着くまでそこにいて良いからねっ」


 穂花センパイの優しげな声音。誰かを慰めるような感じだ。もしかして、春奈に電話してるのか?

 警察じゃないことに少し安心したが、それでも気分はすごく重い。俺……、春奈にどう謝れ……、いや、許してもらうにはーーー、


「爽太くん」


 ん?


 俯いていた視線を、穂花センパイに合わせた。

 穂花センパイは、楽しげに笑っていた。その表情は、不思議と嫌味がなく、好意的に思えたのはなぜだろう。彼女の視線は、俺をじっと見つめていて。


 えっ、えっと、な、なんだろう?


 内心穏やかでないなか、穂花センパイは優しく告げた。


「文化棟の2階、1番奥が文芸部の部室だから」


 …………、ん? えっ? な、なんのこと??


 俺は穂花センパイが何を言ってるのか分からなかった。なんでいきなり、文芸部の部室の場所なんか?

 そんな俺の気持ちをさっしたのだろう、穂花センパイは、ふくよかな胸を張って(見惚れちゃう!)、元気よく言い放った。


「起立!!」

「!? は、はい!!」


 しゃがんでいた体勢から、一気に立ち上がってしまった。だって、そうしないといけない雰囲気だったし!!


「ふふっ、良い子ねっ」


 穂花センパイはそう言って優しく笑った。えっ、いやあの!? こ、これって、どういうことなの!?


「ほら、もたもたしない! 早く行く!」

「いいっ!? いや、急にな、なにを!?」

「ん〜……? 言うこと聞かない子は嫌いよ?」


 今度は、重い黒い目(怖い)で俺を睨め付ける。ひっ!? も、もうわけがわからん!! 女子って怖い!! ちくしょうが!!


 俺は勢いに任せて、足をくり出した。穂花センパイを横切り、備品庫のドアを飛び出すようにくぐった。


「文化棟の2階、1番奥が文芸部の部室だからねつ!」


 穂花センパイの張りのある声を背に、俺は学校の廊下をかけていった。

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