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超危機(バスト的な意味ではなく)

 俺は咄嗟に廊下の角に隠れてしまった。でも気になる!!

 そーっと顔を出し様子をうかがう。春奈に馴れ馴れしく話しかけているのは、高校生の二人組だった。

 俺の通ってる学校は中高一貫校だ。割と田舎な地域だから生徒数も少なめで、部活動を合同でするくらいだ。校舎も隣り合っていて、ちょくちょく廊下で高校の生徒とすれ違うこともある。


 もしかして、は、春奈の部活動の先輩とかか?


「文芸部ってさ、女子2人だけじゃん? しかもさ、君みたいに可愛い中学生の後輩だけ。だからさ、俺ら男での手助けがあったほうが楽でしょ?」

「そうそう、力仕事でいるっしょ?」


 そう言って半ば強引に春奈に何やらOKをさせようとしている。一体なんのことだ? てかこいつら、春奈の先輩とか、知り合いじゃ無さそうだな……。


 少し身構えている春奈が、顔を強張らせつつ、小さな口をそっと開いた。


「ぶ、部員以外の人の手助けは、な、無くても、問題ないので……。で、ですから、結構ですっ……」


 恐る恐る頑張って告げた春奈。明確に拒否の反応を示していた。なのに、


「ふ〜ん……、君もあの子みたいに冷たいね」


 2人組のうち、背の高い方がつまらなそうにつぶやいた。


「えっ……!? ど、どういうことですか?」


 春奈が戸惑う。すると、もう1人の、緩いパーマをかけたやつが続く。


「だよねぇ〜、ついさっきさ、俺ら同じように冷たくあしらわれたんだよねぇ〜。君の先輩にさ」

「えっ……!? ほ、穂花ほのか先輩にですか?」

「「そうそう」」


 上級生の男子2人が、キモいくらいハモって頷いていた。嫌味のある笑みを浮かべながら。


「あなたたちみたいな人は必要ありません、ってきっぱり断られてさ〜」


 緩いパーマをかけた上級生が、髪の襟足をいじりながら不満そうに言った。


「そ、それなら、もう私に聞かなくてもーーー」

「俺らとしては心外なんだよね」


 春奈の言い分を、背の高い上級生が遮った。


「そのなに? たまたま廊下でさ、文芸部の穂花ちゃんが、顧問と話してるのは聞いてさ。純粋に作業手伝いたいって思って声かけたのに、そう無下にされると……」

「逆に燃えてくるよね〜、そのなに? 中学生の後輩達に良いとこ見せたい的な〜?」


 上級生の男子2人が、春奈に詰め寄る。春奈が半歩下がった。だが、


「あっ……!」


 春奈が、小さく慌てた声をあげた。緩いパーマをかけている上級生が、春奈の持っていたバインダーを奪っていた。


「じゃあ一緒に行きましょっか」

「あっ、あの!? か、返してっ……!」


 春奈がバインダーに手を伸ばしたときだった。


「ひゃっ……!?」


 春奈の右手を、背の高い高校生が掴んだ。や、野郎!! な、なに春奈の手、握ってんだ!? 


「穂花ちゃんを待たせちゃ悪いだろ? エスコートするよ」

「あ、あの!? 手、手を……!」

「あっ、ずるいぞお前、可愛い後輩の手にぎんの」

「お前は、穂花ちゃんがいるだろ」

「なるほど。じゃあ許す」


 上級生2人が嫌な笑いを浮かべながら廊下を進んでいく。春奈を、引き連れて。今にも泣きそうで、怖がってる、俺の……、俺の、大事な、春奈をだっ…………!!


 春奈が、あたりをキョロキョロと、何かを探している。きっとそれは…………、口に出さなくても、わかる!!


「だああああ!! お、重すぎるぜぇ!! 本の束がよお!!」


 俺は大声を出しながら、廊下の角から飛び出した。


 背を向けていた上級生2人が、ぴたりと立ち止まり、振り返ってきた。


「「はあっ?」」


 鋭い目つきで俺を睨んでさ。ひえっ!?!? こ、怖え!? 俺なんも悪いことしてないけど!? こ、これだから最近の若者は!! って、俺も若者出すけどねっ! 


「そ、爽太ぁ……!」


 春奈の、明るい声が聞こえた。


 目線が吸い寄せられる。


 とても嬉しそうに、顔がほころんでいた。


 …………、たく、そんな顔されたら、な、なんとかしなきゃな。


俺は、両足に力を込め、前へ進み出た。

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