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出会い(バスト的な意味で)

 幼馴染である白雪春奈しらゆきはるなのバストが大きくなっている、と感じたのは中学一年生の夏のときだった。


「あっち~。なんで朝からこんな汗かいて学校いかなきゃなんねえんだよ……」


 あの頃の俺こと竹本爽太たけもとそうた、12歳の爽やかさほとばしる青年は、太陽光が熱く降り注ぐ空を睨みながら、登校していた。


「アイス食いたい、アイス……、あっ」


 そうだ、春奈の家に寄ってけばいいじゃん。


 春奈の家は、俺の家から割と近くにあった。小学生のころから、ちょくちょく遊びにも行っていたからさ。足取り軽く行動に移したんだ。


 ピンポーン。


「はーい?」


 おっ、ラッキー! 春奈の声だ。


「おっす」

「んん? 爽太? どうしたの? 珍しいねっ」

「アイス食いたい」


 素直な気持ちを告げると、春奈は呆れた声で言った。


「なにそれ……、ほんとっ、バカなんだから……」

「そのバカに、どうぞアイスを恵んでやってください」

「もう……、じゃあ、そこで待ってて。あと1時間くらい」

「ながっ!? 倒れるわ!! 熱中症になるっての!! もっと早く来て!!」

「ふふっ、ば~か」


 ガチャ。

 

 あっ、切られた。まじかよ、あいつ。


 蝉しぐれのなか、陽光に炙られる俺は、耐えるしかなかった。は、早く来てくれ、春奈ッ!! アイスを手に!! できればハーゲン〇ッツ!! 


 カチャ。


 おっ!


 春奈の家のドアが開く。俺のテンションはMAXだった。アイス♡ アイス♡


「おっす! はる―――!?」


 俺の視線は一点に釘付けだった。


「おはよっ、爽太」


 春奈が柔らかな笑みで、小さく手を振る。そのわずかな手の揺れに、敏感に反応し、ふるふるっ、と揺れる、


 おっ、おっぱい!?


 春奈の柔らかな笑みに負けないくらいの、柔らかさポテンシャルを秘めていた。春奈!? お、お前、そ、そんな胸大きかったっけ!? 夏服の白シャツが少し苦しそうに張っているぞ!? はっ!! そ、そうか!? い、今まで春服のジャケットを羽織ってたから、春奈のバストなんか意識してなかったのか!! てか、め、目のやり場に困る!!


「お、おはよっ……、春奈さん……」

「へっ!? ど、どうしたの爽太!? き、気分でも悪い!?」


 春奈が慌てて駆け寄ってくる。ぽよん、ぽよん、と揺れる、


「ば、バースト……!!」

「へっ!? ば、バースな、なに?」

「い、いや!? そ、その、バ、バーストストリームってかっこいいなって思って!!」

「な、なにそれ……」

「い、いや、知らないならそれでいい……、アハハハハッ!」


 うまく誤魔化せたぜ。ありがと、遊戯王、いや、海馬社長。ついでに俺の脳内から春奈のバーストを、バーストストリームで消し去ってくれ!!


「……はい」


 ぴとっ。


「ひゃっ!? 冷た!?」


 頬になにか冷たいものが!?


「ぷふっ、ひゃっだって。あはははっ」

「お、おい、春奈! 一体なにを……」


 春奈の手にはアイスがあった。

 

「そ、それ……」

「ん? そうですよ~、バカな爽太に恵んであ・げ・る」

「お、おう。わ、わりいな……」


 春奈からアイスを受け取る。シャーベット系の棒アイス。ハーゲン〇ッツではなかったが、そんなことはもうどうでもよかった。冷たいもので、取り合えず熱くなりすぎた体温を下げたかったから。一口かじる。冷たさが口に一瞬にして広がり、余分な熱をとっていく。柑橘系の爽やかな甘さが、俺の汚れた心を浄化していくようだ。


「ふぅー、生き返る」


 ほんと、まじで。


「……、良かった」

「ん?」

「あっ、えっと……、だって! 春奈さんって呼ぶんだもん。びっくりしたよ、いつもは『さん』なんて付けないから」

「あっ、ああ……、そ、そうだな」


 そう呼ばざるおえない状況だったからな。


「暑さで気分悪くなったのかなって、心配しちゃった」

「そ、それは、大丈夫だ」

「そう、良かった」


 春奈は小さく首を傾け、嬉しそうに笑った。艶のある黒髪がさらりと、美しく揺れる。雪のように白くて綺麗な肌に、整った目鼻立ち、大和撫子という言葉が似合う美少女の幼馴染を前にして、俺の体温がまた上がっていく。


「じゃあ学校いこっか」

「へっ!? お、おう」

「ふふっ、久しぶりだねっ、2人で学校行くの」

「あ、ああ! だな、い、行こう」

「あっ! ちょっと待って」

「どうした? なっ!?」


 春奈が俺の側に近寄る。もちろん、おっぱいも。俺の鼓動が大きくなる。


「お、おい!? 春奈!?」

「今日は陽射しが強いから、ねっ?」


 そう言って、春奈は日傘をさしていた。


「お、俺は大丈夫だから!?」

「む~、だめ。まだちょっと心配だもん。ほんとは隠してるかもだし」

「な、なにを!?」

「暑くて、ほんとは気分良くないとか、ねっ?」


 意地悪く笑う春奈が、とても眩しい。素直に見れない。だって、俺の気分はとても絶好調だから。いや、むしろ、爆発しそうだ。俺の右腕に、当たりそうなほど近い、春奈のバスト。……、も、もう、げ、限界だ!!


「わっ!? ちょ、ちょっと爽太!?」


 俺は急いで日傘内から出た。


「戻ってきなさいよ、爽太!」


 こっちに駆け寄ってくる春奈。ば、ばか!! そ、そんな凶器おっぱいを揺らして来るなっての!! こ、殺す気か!!(俺のなかの紳士的な精神を!)


「な、なんで逃げるのよッ!!」

「ば、ばかお前! あたりまえだっつうの!!」

「な、なにわけわかんないこと言ってんの!?」

「うぐぐぐぐぐっ!! 春奈の分らずや!! 俺もう知らない!! ばーか!!」


 俺は全速力で駆けだしていた。春奈の大声が、背に聞こえた。


「そ、爽太のばかぁー!!」


 これが、春奈のバストとの初対面の出来事だった。

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