面倒事の香りが漂います
入学試験に合格をし、見事クレアシオンに入校することになった八雲は、今はクミとカイトと合流をしてあったことを話した。
「そう、それは災難だったわね……でも、何でここの理事長は貴方を狙ったのかしら?」
「理事長? ああ、あそこに座ってたの理事長なんだ」
「そうよ。とても実力のある人みたいね。これは聞いた話だから本当の実力はわからないわ。でも、転生者ではない人達が口を揃えてそう言ってたから、確かだと思うわ」
「俺も聞いたぜ。どうやら、グリーって人と昔に何かあったらしい。それもかなりやばい事って話だ」
「え? 僕の父さんとやばい事があったの?」
「「え?」」
「え?」
「あんた今、グリーの事父さんって呼んだ?」
「そうだけど……何で?」
それを聞いた瞬間クミとカイトは慌てふためく。八雲は何故二人がそんなに慌てているのかわからず、首を傾げる。
「お前、正直言って可哀想だな……まぁ、元気出せ」
「そ、そうね! 元気だしてね!」
「どうして、何が何だかサッパリなんだよ、教えてよ!」
クミとカイトは、目を合わせる。これは言っていい事なのか、はたまた知らない方が八雲の為ではないか、そう悩んだ二人は、八雲に確認を取る。
「聞きたいのか? 多分、後悔するぞ?」
「うん、いいよ」
「わかった、実はな―」
それは、まだグリーとアーシャがやんちゃんやっていた頃の事。当時クレアシオンで最強と言われていた人間が三人、グリーとアーシャ、それに現クレアシオン理事長であるルトだった。
三人は、他のクレアシオンの生徒を寄せつけないずば抜けた実力の持ち主で、その頃から三人は有名であった。
そんな時、その三人にとある問題が発生する。
「なぁ、グリー。俺はアーシャが好きだ。お前はどうなんだ?」
「俺か? 俺は別に女なんて興味ねぇよ。戦うことしか頭にねぇからな」
「そうか……なら、俺が貰ってもいいか?」
「俺に確認とる必要ねぇだろ! ドンと行ってこい!」
そしてルトは、アーシャと付き合う事となったのだ。グリーはめでたいと二人を祝った。だが、ルトとアーシャの二人は長続きしなかったのだ。そして三人の雰囲気が悪い中、さらに事は悪化する。
「なぁ、お前らそろそろ仲直りしろよ。俺にはよく分からんが、そんな感じだと上手くいくもんも行かなくなるだろ?」
「うるさい、お前には関係ないグリー。黙っていろ」
「ごめん、グリー……足でまといで」
「おいおいルト、そんな言い方は無いだろ? 好きな女に振られたくらいでケチケチすんな」
ルトはその言葉にイラッとする。
「お前のような何も知らないわからないような木偶に言われたくはない」
「まぁそうだけどよ、それだと卒業試験も落ちちまうぞ?」
「黙っていろ!」
「ねぇ、ルト。そこまで言わなくてもいいんじゃない?」
「なんだ、お前グリーにでも惚れたか? だから庇うのか?」
「いえ、そういう訳じゃ……これは私たちの問題だし……」
「私たちの問題だと? 貴様が私の考えに付いてくればこうはならなかったんじゃないのか!?」
「それは付き合うって言わないじゃない!」
常に冷静で温厚なアーシャも、その言葉に激昴する。グリーも、二人を宥めようとするが聞く耳持たずで、入る余地など無かった。
二人の喧嘩はヒートアップし、最後にはルトがアーシャに手を出そうとした。そこで、グリーはルトとアーシャの二人に割って入り、ルトの攻撃を防ぐ。
「おい、手を出すってことはどういう事か分かってるのか?」
「このクソ女が悪いのだ! 序列トップの私に従わないこのクソ女が!! 単独行動が多く私の意見を無視し、教えること全てに反対をするゴミだ!」
「アンタの考えが間違ってるから言ってるのよ! 全ての人間を従わせるなんて考えの方がゴミよ!」
「なんだと!?」
そこでルトが激怒し魔法を発動させる。クレアシオン全体が揺れるほどの激しい地震が起こり、グリーは咄嗟にアーシャを庇う。
「ルト落ち着け! 校舎が壊れるぞ!」
「知った事か! 貴様ら諸共死ね!」
「死ね……だと?」
そこまで怒りも何も見せなかったグリーの表情が変わる。
「お前、友達に死ねって言ったのか?」
「貴様らなど友などでは無い! 言う事もろくに聞かんクズだ! そんなクズは私には必要ない!」
その言葉で怒りの沸点を超えたグリーが、魔法を発動させるルトよりも早く動き、腹に一撃殴打を加える。さらに、無言で何度も殴り続け、最後にはルトが気を失ってしまった。
そこへ、クレアシオンの教員たちが集まり事態を収拾させる。この喧嘩の後、何度も何度も喧嘩を繰り返してはグリーが勝利した。
そして、最後までルトは仲良くはなれ無かった。そのまま卒業を迎え、ルトは一人でどこかへ去り、グリーとアーシャが付き合う事になったのだ。
そして時は経ち、三人がB級冒険者になった頃、再び事件が発生する。




