村一日目
16
「もう二度とあの神殿には行きたくない」
『まぁ、その内キメィラの翼というアイテムが拾えますので、次からは楽です』
「左様か」
『そしてここから北に行くと村があります』
「はい」
道中出てくるスライムを刈りつつ北へ。
村が見えてきた。
「ほう。産業革命が起こる前のヨーロッパだな」
『はい。全体を通してその時代設定です』
水車が回転している。石畳の小振りな村。
「処で俺は5ゴールドしか持っていないのだが」
『あぁ、そうてしたね。取り敢えず500G降らせます』
中空から金貨5枚が出てきた。100と記されている。1ゴールドよりも少し大きい。
「Gとは」
『ゴールドの略です』
17
『まず、村とか町といった人里には、宿屋、道具屋、武器屋などがあります』
「はい」
『まずは武器屋で武器を揃えましょう』
「飯屋はないのか」
『それは宿屋ということになります』
「腹が減った。まずは飯だ」
『えぇー』
宿屋に入ると毛むくじゃらのオヤジが現れた。
来たのは失敗だったかも知れない。
「宿屋店主のバドルだ。宜しく」
「ヘンタイだ。よろしく」
「ヘンタイか。いい名だな」
褒められてしまった。
バドルが言を継ぐ。
「ヘンタイの旦那。妻のエレナと、娘のリリィだ」
「宜しくお願いしますね。ヘンタイのお兄さん」
「いらっしゃい。ヘンタイのお兄ちゃん」
柔和そうな女性に、快活な少女。5歳くらいか。
うん、こうでなくてはな。
「一泊100Gになります」
18
二階に通された。
後程メシが来るらしい。
「俺はヘンタイという名にしたのは正解だったかも知れないと思い始めている」
『まぁ確かに貴方みたいな人には相応の名かも知れませんね』
天使は呆れ果てている。
「お兄ちゃん。入ります」
「ん」
ヨタヨタと皿を運ぶリリィ。
よき。
「チキンの香草焼きです」
「ありがとう」
「ごゆっくり。ヘンタイのお兄ちゃん」
と言って去っていく。
「新たな性癖に目覚めそうだ」
『そうですか。私は貴方を選んだのは失敗だったかもと思い始めています』
19
「そして、料理は本格的なんだな」
『創作者である私の先輩が食に拘る方でしてね。あのデ◯』
この天使がいうなら、彼の先輩はよほど恰幅がいいようだ。
「うまい」
「こちら食後のコーヒーになっております」
食い終わった頃にエレナが運んでくる。
「ありがとう」
午後の陽射しが窓辺に降り注ぐ。
珈琲まで本格的だ。豆から淹れているに相違ない。
全てが面倒だ。このまま午睡してしまおう。
うつらうつらしながら珈琲を呷って。ベッドイン。