城下町2
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「魔物だ!」
という誰かの声が響いた。
物陰から覗いてみる。
頭の無い、中身ががらんどうの鎧が闊歩している。
『彷徨騎士ですね』
自動操縦殺戮機械といった感じか。
城下町の者は皆建物の中に避難している。
じっとして動いていなければ問題ないんだろうな。
「うぃー、ひっく、大分のんだぜぇ」
と言って空気の読めない馬鹿、じゃなくて酒場のおっさんが出てきた。
「げぇー魔物」
丁度正面に彷徨騎士がいた。
【彷徨騎士のこうげき
おっさんに1028ダメージ】
そしておっさんの姿が消えた。
あぁおっさん、かわいそうに、名前も知らないけれども。
あぁ酒飲みのギャンブラーのおっさん。それも多分基本的には負け組に部類するタイプの。
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まぁいずれにせよ黙ってやり過ごすに限る。
おっさんの防御力がゼロだったとしても1028ダメージ与えるということは俺の防御力でも一撃死ということだ。
無駄な争いは避けるべし。
バードも後ろでびくびく震えているし。
問題ないな。
ん?
スライムがいない。
あぁ、このガキ、じゃなかったバードを追いかけている時にはぐれたのか。
どっかから現れるなよ。おっさんの二の舞になんぞ。
と、
後ろからバードが駆け出した。
えっ何やってんの?
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「やいコラ、魔物!オイラが相手だ」
えっ、
棒キレ持って、あいつ相手に、何を?
無理だろ。常識的に考えて。
膝震えたまんまじゃん、あぁもう。
「オイラは負けない…立ち向かうんだ」
蛮勇と勇気は違うって。これまで誰か教えなかったの?
彷徨騎士がこちらにやって来る。
「バカ野郎が!逃げろ」
「兄ちゃん。オイラ…」
彷徨騎士が振りかぶる。
俺は駆け寄ってバードの前に立ち塞がった。
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白い光に包まれる。
何か、神殿が見える。
【せかいじゅのはが発動しました】
そうして、戻ってきた。
彷徨騎士が去っていく。
目の前には血塗れのバードが倒れている。
「おい!」
バードを抱き抱えた。
「兄ちゃん、オイラ、オイラ、勇者に…」
またか。
また、失うのか。
俺が、無力なせいで。
バードの体が消える。
バードの流した血も消える。




