魔方陣って厨二全開だよね
はい。という事で今回は北と東、其々からやって来る愉快な魔物二千匹を討伐するという事でですね、何故かわたくしに白羽の矢が立ちまして、策を練ることになった訳ですが、一言言わせていただきますと、
「無理言ってんじゃねーーっ!」
「そんな泣き言言ってる場合じゃないぞ。」
あ!痛っ!叩かないで!あとなんで木刀があるの⁉︎
「さっさとしろ。こちらだって時間がない。もう半分切ったぞ。もし失敗したら国が崩壊。勿論貴様らの命は無いからな。」
じゃあなんでそんな大事な任務をまだ来てから一ヶ月経ってない人に任せるかなぁ。もしかしてそこまで信頼されちゃってる?俺ら、もしかしてこの国にとって無くてはならない存在になっちゃった?
「夢は寝て見ろ。」
いったい!寸分違わず同じ場所を叩きやがった!
教官は又会議があるという事で帰って行きました。
あの人が入っても何も変わらないと思うけどなぁ。『全部切れば良いだろう。』と、ドヤ顔で言ってる姿しか想像出来ない。
さて、無駄話?も終わった事だし、研究しますか。
といっても今は専ら手探りの状態で全く進展が無い。取り敢えず無駄は省いたけど、そこからが未だ進まない。今日も線を引いて消して、塗って削って、閉じて開いてを繰り返してるんだけど・・・
(閉じて開いてはやってないじゃん。)
(あーまた変なこと口走ってたか。)
(うんうん。まぁ、思念だから念走ってるになるのかなー?)
そう言って梨花はこの部屋のドアを開ける。
こっちの服である簡素なベージュのワンピースで、面倒見の良い町娘感が出てきた。
(だから言って無い・・・まぁ、良いや。)
ここ数日はこれが日課だ。研究中に日が昇って梨花が飯を持って来てくれて教官が発破をかけに来て、また日が沈む。これが現状の日常である。因みに思考をインターセプトされるのも最早慣れ、驚く事は無い。
(毎度毎度済まないね。)
(良いよ良いよー。たとえサルが教官の鬼指導で寝込んでしまい他の人が『あんな魔境入れるか‼︎』と拒否していて、幼馴染だからという理不尽な理由でやっているとしても私は全然良いよー。)
(おをぉ・・・すみません。)
なんか俺は知らぬ間に親友に途轍も無い心労を掛けていたらしい。ホントありがとう。
てか、この場所魔境認定されてるのかい。俺にとっては居心地の良い寧ろ楽園なんだが。
(で、今何やってるの?)
机を俺の後ろから覗き込みながら言ってきた。割と彼女も美人だし健全な男子高校生なら少しドキッとするかもしれないけど、俺にとってはただ研究作業の邪魔だなぁとしか感じれない。
枯れちゃったかなぁ。こんな若いのに。
それとも何も見つけれない事から焦っているのかな?
(ん、魔法陣の眠っている法則を見つけようとしているんだけど・・・)
(をお、あの厨二っぽい奴ねー。それにしては、すっごいグチャグチャで格好良さの欠片も無いねーー。継ぎ接ぎの絵を見ているみたい。)
(現実はこんなものさ。・・・あー、クソ!これも違う。あれが成り立たない。)
(ふーんそうかー。じゃあ、また来るよ。その研究に生き死にがかかっているけどそんな気にせず頑張ってねー。)
(だからなんでそんなプレッシャーをかけるのさ⁉︎ただでさえ切羽詰まっているのに!)
あと三日である。
結局威力は少し上がったけどそこに共通性は見つけられなかったし、無理だったのかなぁと思い始めもしている。
はぁ、
ため息を吐いて机の上から今日の昼食をとる。
相変わらずゴールデンボアづくしだけれど、まぁ栄養は取れてそうだし良いか。
梨花達ははもう飽き飽きしているらしいけど。
ふと見下ろすと、魔方陣が見つめ返して来る。まるで何か苦情を言っているように・・・。
ちょっと机を押し、反作用で椅子ごと交代する。
そうすると、短い睡眠時間の中でも夢に出るぐらいにはよく知った魔方陣が全く違って見える。
ふーん、こうやって見ると結構綺麗に整ってるじゃん。前に比べるとだけど。
ジグザグ模様を遠目に見ると直線に見える。他にも、色々な脳の補正を景色にかけると、あの中学生が憧れる魔方陣の面影があるような気がする。
たしか梨花も継ぎ接ぎっぽいって言っていたなぁ。
ん?継ぎ接ぎ?ゑ?
あれ?
もしかして・・・
そんな馬鹿な・・・と思いつつも一つ五芒星に見えなくも無い場所を思い切って書き換えてみる。
魔力を流す。
魔方陣を起動する時は魔方陣とその魔法を出現する空間の双方に魔力を流さないといけない。そうでないと魔方陣の上に出てきてしまい、今の改良型だと部屋全体を焦がし兼ねない。
だからわざわざ窓の外、城の中庭に放っていたのだけれど・・・
ごぅ‼︎
「あーーーー・・・・マジで?」
いつもは真っ赤な炎が、今は綺麗な青の炎になった。
それはその火の魔方陣で生み出された炎の温度が上がったということだ・・・いやいや、本当に?
ただ燃えるものが足りなくなっただけでは?
ジュウーーーー
ん?
不思議な音に誘われて炎の下を見ると・・・
普段新緑が眩しいその芝生が赤熱して溶けていた。
やっば、もしかしてとんでもない事になるかもしれ無い。
取り敢えず今から襲って来る魔獣の皆様へ
ご愁傷様です・・・