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魔法は研究するものです。  作者: しけたけ
一章 人間族は奴隷らしい。
6/15

暗躍より研究

少し短めです。

 



「成る程、お前達の言いたいことはよく分かった。そうだな・・・」

 ゴクリ、と唾を飲む。

「・・・条件通りこの城での自由を確約しよう。」

 途端、此処が王の御前である事も忘れて一斉に立ち上がって喜んだ。かく言う俺も嬉しさを隠しきれず、つい頬が緩む。

 実の事を言えば、陛下は信じずそのまま奴隷として働くと思っていた。自分だって格の低い・・・それこそ鼠なんかが急に温暖化の良い解決策があると言って来ても信用しないだろう、十中八九世迷言と切り捨てる筈だ。それに陛下の言う事は全て狂言で、解放する気はさらさらなく、そのまま飼い殺しに・・・というのも想定していた。

 ただ、今回は良い方に予想が外れた。

 そして、次の一言で此処のメンバーの熱狂は更に高まった。

「もし、お前達が更にこの国に利益をもたらす事が出来たならば、それに応じて報酬を、最高で爵位を与えよう。益々の発展にこの調子で貢献して欲しい。」

 なんと!貴族に成れるなんて!凄いじゃないか!

 そんな風に皆興奮していて王の横のアメちゃんが笑いを堪えてる様を見た人は居なかった。



「宜しいのでしょうか?」

「彼等を貴族は認めないという事か?確かに彼奴らの屑さには呆れてしまうがその心配はない。」

 アメ財務大臣、稀代の才能を持ち、僅か五年で侯爵まで上り詰め、それ故に沢山の貴族を知っているその人の質問に自分もその屑どもの一員だなと自嘲しながら答える。

「なにせ彼等に爵位を与える事は無いと言って良い。その為には国を大々的に五度は救わないといけないからな。それに今まで命を散々狙われたお前なら分かるだろう?彼等は強大な『何か』がある。」

 その言葉にアメは静かに首を縦に降る。

 そう、かの国王が彼等を縛って居ないのは王自身が神から与えられたチートを本能的に感じていたからなのである。どんな力か分からない以上、上から押さえて、もし反逆されたり国外逃亡されたりしたら国にとって損だ。

「だから、ある程度の自由を与えて不満を適度に削いでおく。それに彼等は仁義がある存在にも見える。今のうちに恩を売れば、必ず利益になるだろう。それにな・・・」

 一回言葉を切って王はその本心を言う。

「あの集団はいずれ何かを創る。それもこの国、世界をいい意味で壊すような物を。そんな予感がしたのだ。自分も期待せずにいられない。」

 すると、アメは顔を綻ばせて言った。

「やはり陛下も分かりますか。実はあのマルウスも、そう思っているみたいなのです。」

「そうか、あの堅物が、か。最初は失敗かもしれないと思ったが、とんでもない当たりを引いたのかも知れんな。」

 王はその言葉を確信に変えて、満足気に去って言った。


「うーむ、これは酷いな。」

 思わずそう呟いた。目の前には友人、あの小宮に頼んで、書き上げて貰った落書きにしか見えない物が幾つかある。

 異世界三日目、自由を確保して何をしているかと言うと、魔法の研究である。

 この世界には詠唱魔法と魔法陣による魔法、エルフが使えるという固有魔法の三つがあり、人間には前二つが出来るらしい。

 この中で詠唱魔法ではなく魔法陣を選んだのは、断じて、詠唱が厨二っぽいとかではなく、分かりやすいからである。

 金属に模様みたいな傷を付けて魔力を流すと発動する物なので、弄ってみてその発動を観ることで何がどういう役目を果たしているのかが一目瞭然。幸い魔法の事が分かるので、見ただけでは分からない効果の変化も気付くことが出来る。

 一方詠唱は何をどう弄ればいいかの選択肢が多過ぎるし、一度試してみたが、どうやら一語に複数の役割があり、その為、更に選択肢が増えたので早々に諦めた。

 ただ、此処で問題があった。この魔法陣もかなり複雑で、殆ど引っ掻き傷だ。

 然も、教本通りに描いても発動しない時もあった。原因は不明。

 今出来上がった物は全部で三つどれも炎が関わる、所謂火属性である。

 似たような物なら魔法陣の共通点が多くなり調べやすく成るかな、との希望的観測である。

 先ずは、それを削っては魔力を流し、削っては魔力を流しを繰り返して最適化に努める予定。

 早く元の世界に戻れる魔法を創りたい。



 その頃監獄では。

「クソッ!なんでこんな居心地の悪いこんなところに放っていやがる!俺らは人間だぞ!」

「そうだ!解放しやがれ!」

 蓮とその取り巻きの一人、禾間雑魚(のぎまざうお)が誰もいない通路に向かって叫んでいた。

「なんなんだ此処はよ!俺の方が正しいだろうが!なんで正義が負けるんだ!狂ってる!国も!世界も!」

 地球では散々理不尽を通してきたのに何を今更と、ここに他のクラスメイトが居たら呆れるだろう事を平然と吐かし、彼等は尚も騒ぎ立てる。

 これでは、誰も聞かない筈だった。

「そうねぇ、坊や。こんな世界嫌だよねぇ。」

「っ⁉︎」

 その声は蓮らの後ろから聞こえた。思わず振り返ろうとしたが、それを制する様に刃が首筋に当てられる。

「大人しくなさい。大丈夫、私の主はあなたを気に入っているわ。豪華な食事と何処にも負けない寝床を準備して待ってる。」

 言葉を聞いている内に、だんだん蓮達の目がトロンとしてくる。

「さあ、一緒に来なさい。そして、この世界を壊しましょう。」

 先程の喧しさが嘘だったように従順に頷く。彼女はそれが確定事項だったと言わんばかりに、それを眺めながら蓮に手を触れる。人とは思えないその青白く冷たい手だった。



「何⁉︎あの収容したヤツらが居なくなっただと⁉︎原因は⁈」

 彼、マリウスはその報告を聞いて驚倒した。

 あそこは確かに監視を人手不足で置いてなかったが、普通ではあそこから脱出しようとすればどうしても誰かに見られる経路しかない筈だ。だが、敵はどうやら正攻法では来なかったようだ。それは彼に気圧された部下の報告で明らかになった。

「か、壁に巨大な穴を確認したので、その・・・恐らく穴を掘ったのかと。」

 マリウスはその驚愕の事実に倒れるのを堪えるで精一杯だった。

(馬鹿なっ⁉︎あのアダマンタイトを打ち抜くには相当な威力が必要だ!少なくともその破砕音は城全体に響くはず!)

 ただ、現に誰にも気付かれずに破壊している以上、その力量は少なくとも我々では手に負えない。

 そんな未知の強敵に自分はどうすればいいか、幾ら考えても全く分からなかった。



 あれから三日経ってやっと三つの魔法陣を削り切った。と思う。外ではなんか誰かが居なくなっただの開拓が順調だの言っているが、そんなのよりこっちである。

 なんと、『魔法陣作成』のスキルを手に入れたのだ。まだレベル一でまだ何と無く書き方が分かる程度だがそれでもかなり助けになる。今まで成功率が三割を切って居たのが全部成功するのだ。研究が三倍も捗るぜ。

 そして、魔法陣では傷の深さが関係あるのも分かった。外側の方が深いみたい。内側に行けば行くほど浅くなっていく。うーん、なんと素晴らしいかな!

(お、おお、相変わらずキモいなお前。)

(はあ、これの何処がキモいのかい?知らぬものを知ろうとするその神聖な行為を罵り嘲るなんてあり得ない!)

(うん、やーっぱり変人だ。言っとくけどそれギミスト教徒が知ったら抹殺されかねないよ。はい、これ朝飯ね。しっかり食べないとその金属もうあげないよ。)

(はいはい・・・そういえば悟は?)

 あいつ前草原へ行った時案の定逸れて、反対側の門で立ち尽くしていたらしい。故意では無かったので、死刑は免れたが、罰として教官のサンドバッグとなっているらしい。

(うん、まだ教官に扱かれてるよ。蓮が居なくなってから厳しくなっているって。悲鳴あげてたよー。それじゃ私も皆んなとアイデア出して来るねー。)

(悟の奴気の毒に。うん、せいぜい成れない貴族目指して頑張ってね。)

(そう、じゃああなたも慣れない異世界で研究頑張ってせいぜい役に立たない成果を目指して頑張ってねー。)

 ちなみに最後のは合言葉だ。もし食べ物に毒を入れられては拙い。なので、この物騒な言葉で本人かどうか、毒は入ってないか分かる。なんか侵入者が出たらしいので一応の策です。

 邪魔されたら面倒いから。ビビってなんかいないよ。



 こうして後一週間、俺らは束の間の平和を楽しんだ。

 不味い何かが迫ってきているとは誰もが予感してはいたが、敢えて皆目を背けていた。




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