プルーリル第一平原農業化計画その一
すみません、遅れて本当にすみません。
次回はちゃんと日曜に載せれるよう尽力します。
「という事は見つかったっていうこと⁉︎」
アメちゃんがテーブルから思わずと言った風に立ち上がった。
「まあね、多分元の世界にいる人なら殆ど気付くと思うよ。」
「教えて!早く!さあ!」
「いやいや待て待てどうどう。まだ確証は無いからね。きちんと確かめたい。その為には外の様子が分からないとなんとも」
「分かった!王様呼んでくるね!」
「え、ちょまっt」
「ヒャホー!」
そう言って彼女は自分の制止も聞かずこの大ホールから姿を消した。幼女がはしゃいでいる姿は微笑ましい限りで・・・ハイになり過ぎて奇声を上げてるけど大丈夫か?この中にいる人の大半が訝しげな視線を・・・うちのクラスメイトも無遠慮過ぎない?命かかっているのに大層な事で。
「あーあ、飯残してやがる。勿体ねぇ。なあ、これ食って良いよな?」
「ハァ・・・展開早過ぎない?ほら、もっと、こうさ、山場みたいなの無いの?ドカンバンヒュビビーンズドーンみたいな。折角のチートが台無しなんだけど。」
僅かな例外の方が危険でした。
食うなよ?仮にも貴族みたいだし何言われるか分からんぞ?あとその擬音全部爆発してない?そんなところ俺らじゃイチコロだぜ?
あの後又謁見の間にお邪魔しまして、外出許可を頂きました。後、もし成果を挙げれる見込みが有れば自由に城内を動けるという事も何故か貰えました。王様が優しいのか、其処までして取っ掛かりを掴みたいのか。
これはその時の会話の一部です。中身が紙のように薄かったのでその他は割愛で。
「して、その解決策とやらはなんだ?」
「はい、それは貴国の農業化、つまり食べ物を作る事でございます。」
ガタン!王が玉座から立つ。殺気がもれなく付いてくる。
「我等を謀っておるのか?それともギミスト教に喧嘩を売っているのか?自然に手を加える、ましてや作るなどどういう神経をしておるのだ!重大な禁忌だぞ!」
このギミスト教というのは中々過激で他にも自然の理を探してはならない、自然に抗ってはいけないなど有ってまるで文明の発展を縛り付けている物だった。夜に灯をともすと死刑って、酷過ぎない?そのくせ魔物を狩るのは良いのか・・・
(梨華、お願い。小宮博来からギミスト教の原典について聞いてきて。特に自然についての項目。)
なんとかしようととりあえずその教えの詳細を聞く。この小宮は和風な現地人とかではなくれっきとした転生者で、この異世界についてある程度の知識を引き出す事が出来る『知識: 異世界』を持っていて、相棒の大宮識斗の『知識: 元の世界』と共に生きたネットと化した奴らだ。
(りょーかーい。・・・・・・来たよ。)
「『聖典第五条 自然を自らの利益の為に悪戯に壊すことを禁ずる。』でしたっけ。しかし僕達は自然を壊さず、むしろ保護をします。そしてその報酬として植物から食料を貰うのです。これの何処に悪い点がございましょう?」
「た、確かに。だが・・・」
このようにまず王陛下が質問して、俺が他のスキルと連携を取ってそれに答えるのを数度、殺気にも慣れた頃に外出許可(それと城内の自由権)を貰った。いやー疲れたー。
遂に初の城以外での活動の日。なんとか此処まで来たぜ。いやー長かった。
「(いやいや、二日で奴隷からこの待遇まで上げるのはむしろ早すぎ)るだろう!」
うげ、外と内とのダブルコンボ。なんでここまでタイミングが合うんだ?
そんな事を言っているとあっという間に城の勝手口的な所に着いた。縦五メートル横三メートルはある、金の立派なレリーフの施された扉を見ると裏口感ゼロだけども。
「それでは最終確認だ。外のエニーの街の北に広がる平原が目的地、其処へこの七人が視察へ行くという事で良いな?」
そう言って此処にいる大小宮と梨華、悟、俺、それと新たに加わった高原有菜、今野龍太を視線で指す。
「はい、大丈夫です。」
うん、持つ物持ったし、打ち合わせも終わったし。自身満々に答えると教官は満足したように前へ向き直りその金属製の扉を押す。
「よし、では行くぞ。今は人通りが少ないが、それでも逸れるぐらいの活気は有るぞ。もし俺を見失ったらその日のうちにお前達の頭は帰るべき胴体を無くすだろうから気を付けろよ。」
え、怖!恐らく逃げるなと釘を刺したのだろうが。悟が不味い。アイツあの有名な海賊漫画の某三刀流剣士ぐらい酷い方向音痴なんだが。
外の熱気は想像以上だった。石畳でできた四車線ほどはあるだろう通りを沢山の人で埋め尽くしている。冒険者って奴かな?大半の人は差はあれど武具を着けているし。そんなむさ苦しいおっさんや艶やかで少し粗野なお姉さん等が横にこれでもかという程並んだ屋台に入っては出てを繰り返している。至る所から出所不明の怒鳴り声や客引きの声が響いて普通の声が一切通らない。確かにこの活気はハロウィーンの渋谷を超えるほど凄い。
「うっへぇ・・・人酔いしそう。」
「ここまでとは思わなかったな。」
右も左も前も後ろも人、人、人・・・梨華の言う通り頭痛くなりそう。俺と梨華はこの光景に圧倒され
「この街はどうやらこの国では最大の都市みたい。」
「この感じ・・・地球だと中世より前ぐらいのヨーロッパに似てるね。」
宮コンビは街の景観を観て感想を述べて、今野、高原は
「お、これは牛っぽい!こっちは鳥かな?・・・わぁ!これはワニ⁉︎」
「あーそう・・・果物はあるけど野菜は米どころか根菜すら無いとは。」
それぞれ屋台に並ぶ物を見てそう呟いた。
「おい、早く来い。お前達は草原で食料も無く夜を越す気か?」
そう教官が忠告しても思い思いの思考に沈んでいるせいで歩みが進まない。
と、その時だった。
「・・・ん?」
自身の視界の右奥、少し薄暗い路地の入り口から魔力光らしき光が走った。気がした。
一瞬パチン!と弾ける様に大通りに飛び出したのだ。それは誰にも当たらずにすぐ霧散したが、よく集中するとあちこちの脇道から同じモノが飛んでは消え飛んでは消えを繰り返していてマグレでもないみたい。
(なんだろう?特に害はなさそうだけど・・・)
「・・・おい。いい加減にしろ。それとも死にたいか?」
そんな誰でも震え上がるだろう野太い声が聞こえて命の危機を感じ、本能が思考を咄嗟に止めて教官の所へ急いで向かうように警鐘を鳴らす。
彼は声だけで服従させるスキルを持ってないと思うんだが。
無事門を出てこのなんも無い草原にやって来た。地平線がこんなくっきり見えるなんて!川も流れているし見たところ動物も居ない、馬車の轍は有るけども其処を通る人の姿は無い。季節柄蝶々が飛んでいてもおかしくないのだけどそれすら無い。只々緑が続くだけだ。
「見事に何もないな。」
「これはこれで良い景色だと思うけどねー」
「此処は魔物を始め全ての動物が居ないみたい。」
「地球ではあり得ないような環境だ。」
あの大宮が言うならそうなのだろう。彼はそのスキルを持つ前からネットよりも早く知識を確認出来るほど記憶力があったし。現に俺も調べる時スマホより大宮に聞いていた。オッケー大宮が合言葉。
「で、どうなのか?高原。」
「土もそんなに悪くないな。此処は平らだから日も当たる。近くには大きな川も見えるし、正に開拓の為にあるような土地だな。」
「そうか、今野、そっちは」
「ちょちょっ!これは麦の種!こっちは米!人参、いも、さらにはキャベツまで!此処は何処の楽園ですか⁉︎其処らじゅうに食べ物が・・・」
「大丈夫みたいだね。」
「・・・いや、何処から見ても大丈夫じゃないよな、頭が。」
「何はともあれ、無事食料は確保出来そうです。今から言った事を守ってもらえば今年も来る冬を乗り越えられるでしょう。」
「ほう?そうか。では早速教えて貰おうか。」
こうして、この広い草原、後に世界の食料庫と呼ばれるこの『プルーリル第一平原』の農業化は始まったのだった。
あ、悟は?