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魔法は研究するものです。  作者: しけたけ
一章 人間族は奴隷らしい。
3/15

交渉は難しい。

すみません。今回は研究要素ゼロです。

 



(じゃあ、出来るだけ皆のステータスを引き出してほしい。対策を考えるから。)

(アイアイサー!期待しててね!)

 情報を共有する方法が確立出来て本当に良かった。最悪自分のスキルで交渉という事も視野に入れていたが梨華がいればもっと良い展開に出来そうだ。ちょっとここまで順調過ぎて怖い。

(この状況を順調と呼ぶなら日本の暮らしはどうなるのかな?ねぇ、ドーリ)

「うぉあ!」

 皆の鬱陶しそうな目が恐いです痛いです抉ってきます。

「今度はなんだ?」

「ちょっと目の前に幽霊が出まして。なにぶん平和な場所から来たので見かけなくて、びっくりしました。」

 この時ほぼ全員が思っただろう。何言ってんだこいつと。でもね、それを信じる奴もいるんだ。後ろのアホ()とかバカ()とか悟とか。もしかしたら教官も・・・いや無いですよね一緒にするなって感じですよねー

「ほう、お前は分かるんだな。このお前に取り憑いた怨霊が。見直したぞ。」

 は?え?どういうこと?教官は俺の困惑を余所にツカツカと目の前まで来ると、おもむろに携帯していた短剣をから抜く。すると、何処から見ても鈍な鉄剣が例の魔力の光・・魔力光とでもするか・・・で包まれていった、と思ったら自分の胸の皮膚に焼ける様な痛みが走る。見ると赤い一文字が物の見事に描かれていた、痛いっ!

 肩に刺さった時で分かったつもりだったけど、やっぱり平和ボケした日本人にこの世界は厳しい。

(うぉー派手にやられたねぇ。その良くも悪くも付いてない腹が今、丸見えだぁ。胸筋も・・・)

 そんな事いうなよ!結構気にしてたのに!どれだけ食べても運動しても変わらなかったんだもん。しょうがないじゃん・・・ん?なんで彼女は俺の体格が分かるんだ?俺をこの万年中学生みたいな奴は付け回すとかはしない。もし俺を貶めたければこんなんでは済まない。

(誰が万年小学生だ!こう見えてもBはあるぞ!)

 そこで視線を改めて下に向ける。まだ血は止まらないようで、自慢のマシュマロ肌にケチャップ(自家製)が尾を引きながら滴っている・・・マシュマロ肌?そういえばさっき皮膚を斬られたよね。ならばもちろん服も被害に遭う訳で・・!

 その思考に行き当たるや否や顔が赤くなる。そう、今俺の上半身はフリーダム。そしているのは最前列。あらゆるしがらみがないその上体を哀れみながら皆見ているだろう。めっちゃ恥ずかしい。そして礼儀のレッスンの事から察するに教官は・・・

「なに下を見ている。もうそこには霊はいないぞ、早く歩け。」

 こういうのにとんでもなく疎い。

(いやいや、あんたがそれ言っちゃう?)

(は?)

(何でもないぞー。)

 兎に角このまま王と面会は嫌なんだけど。前述の通り自慢とは程遠いものでございます。

「すみません。流石にこれでは恥ずかしいのですが」

「何を言っている。何処に誇りある自身の体を恥ずかしがる男がいるのだ。」

 はい、ご覧の通りでございます。筋肉バカなのかな?

「兎に角、怨霊は断ち切ったからさっさと行くぞ。」

「・・・はい。」

 異論は認められません。

(プッ、ククク・・そんなにその筋肉のきの文字も無い自慢の体を主人に見せつけたいんだ。この露・出・狂♪)

(うるさい。それよりも皆のステータスはどうなんだよ?)

(ハハハ・・・はぁ、笑った笑った。それなんだけど実は何人か断られたんだよねー。だから得られた者からね。まずね・・・)

 やっと本題に戻ったよ。ハァ、なんで皆の情報を聞くのに半裸になる必要があるんだろう。メイドさんとかに見られなかったのがまだ救いかな。人生は幸と不幸が交互にやって来る。



「国王陛下のおなーりー‼︎」

 謁見なう。本当に王様なんですな、主人が。玉座が数段の上に鎮座していてそこから鮮明な紅色の絨毯が俺の後ろの扉まで続いている。その教室の倍以上の広い部屋に居るのは教官とクラスメイト。そして多分今から来るのだ、王が。俺の上半身を見に。ってか、誰かすれ違ったら頼もうとしてたのに一人も会わないなんて。ハア・・ ついてない。

 とりあえず大体の人のステータスは把握することが出来て、一応解決策は見つかった。まぁ、推測が当たっていればだけど。

 そんな事考えながらも本能はたった三十分で植え付けられた臣下の礼を無意識に取っている。スパルタは凄いね。この臣下の礼というのはアニメなどでよく騎士がする様な奴だ。左膝を直角に立て逆の手を床に真っ直ぐにつき、頭を下げる。腰から頭頂まで一直線。逆手は立てた膝に添える様に。多分これが正解。何故多分かというと教官は間違えたら教えてくれる(ナイフで)だけで特に何もしなかったのはこれだけだからね。

「喜べ、お前達は運良く選ばれた。」

 王が唐突に喋り出した。服には突っ込まないんだ。勿論顔を下げているのでその表情は伺えない。なんか皆顔見えなくね?最初。ある程度話さないと見えないシステムが流行っているのかな?そんな下らない事を考えているとふと背筋に悪寒が。え?教官考えている事分かっちゃうの?恐っ!

 そして王は続ける。

「お前達は今後、この城、エニー城で雑用として此処で働いてもらう。此処なら食餌もあるし部屋もある。何より人間族初の我が直々の配下となるのだ。これ以上名誉な事はなかろう。」

 まあ、予想通りの展開だ。多分俺らは呼び出された。それもかなり期待されて。でも来たのはこの世界で最低位に近いだろう人間族。使い道に困った結果此処で働かせるのだろう。

 よし、事が思った方向に進んだので俺の完璧な作戦(パーフェクトプラン)通り待ったを掛けるとしようか。

「ちょっと待ってk」

「はぁ⁉︎そんなの認めないぞ!俺は!」

 悲報。パーフェクトプラン(笑)、音も驚く速さで瓦解。

 えーと、確かアイツは秋口れんだっけ。クラスの委員長で大分はっちゃけてる奴で、ステータス開示を拒否された一人だ。彼が声を上げたとすると・・・

「本当まじあり得ねー!」

「そうだぞー!」

「誇り高き大和人を舐めるなよー!」

 やっぱり周りの取り巻きが騒ぎ出した。てか一人、大和人は誇り高く無いし戦闘民族でも無いぞ。ハァァ・・・もう知らね。出来れば全員救いたかったけど此処で不要なリスクを負いたくは無いな。

(わわわ、どうしよう?)

(自己責任という事で。)

(うわっ、出たよブラックドーリ。)

 なんかの鳥か?それは。

 とりあえず傍観に徹していると案の定というか、教官の方から音がしたと思うと、僅か一秒足らずに元の静謐な空間になった。はっっっっっや!十程あった怒声発射機を一秒て。どう合わせて計算しても音速超えてるんだが、ソニックブーム仕事しろ。

「どうしますか?処分しますか?」

「いや、其奴らでもやれる事はあるだろう。牢に入れろ。」

「はっ!」

 あ、なんかデジャヴ。ああやって連れて行かれたのか。雑だなー。でも、これなら外に連れて行かれた奴は幸運かも。重圧がぐあーって、象にでも踏まれたのかと錯覚するほどの圧迫。剥き出しの肌に沁みる。おそらく源は教官だぁ。失意と警戒が全然隠れてません。寧ろ城が震えるレベルで主張しております。

「この者達は?」

 下手な事すると直ぐ自分も意識が暗転しそうだが、チャンスは今しか無い。震える手を恐る恐る王へ出す。挙手のポーーズ。直ぐさま教官の左手が懐に入る。あ、左利きだったんだ。

 勿論之は想定の内。パーフェクトプランB、少し荒いが悟に対処して貰ってる間に説得するとしよう。打ち合わせはしてないが長年の付き合いだ、察してくれるだろう。

(うわぁ、めっちゃ不安・・・)

 だが、パーフェクトプランB(笑笑)もまた、ミサイルもかくやという速さで吹き飛んだ。横槍再び。

「ほう、なんじゃ?申してみよ。」

 今度は嬉しい誤算です。まさか完璧(パーフェクト)の上を行かれるとは王よ。そなたのなんと慈悲深きことか!そう思ったら教官の敵意も渋々と言った感じで引っ込んで行く。やっぱり心読めるんですねニュータイプですね分かりません。気を取り直して続ける。

「僭越ながら。僕達は先程退出していった者達と同じように()()()()()()()に居た身。とてもこの待遇を認める事が出来ません。」

 また全身から汗が吹き出すが構わずまくし立てる様に続ける。

「勿論、タダでとは言いません。微力ながらこの国の経済問題解決をお手伝いさせて頂く、ということでどうですか?」

 あれれ?言葉が返ってこない。気付けばさっきの殺気も無いぞ?外してしまったか?拝啓おじいちゃん。もうすぐ其方に向かいます。あ、駄洒落じゃないよー。たまたまですよー。おおっと、殺気が戻って・・・っ⁉︎

 殺気のギアがぐーんと上がった。何これ?前のが一円玉レベルだよ。ヤバイ、ここで間違えるとゲームオーバーだ。三途のせせらぎを感じる。

 王が問う。

「なぜ、お前はこの国の事を知っている?」

 俺は答える。

 まず、他国の間者や、犯罪者では無く、推察だと証明する。

「この謁見の間に来るまでの間。一人としてすれ違いませんでした。それは雇ってる人が少ないからと推理できます。」

「たまたまではないのか?」

「王を狙う愚かな者は何処にでもいます。万が一の事を考えると、牢の間と謁見の間を対角に取るのが良いかと。そこから察するに僕達はほとんど城を突っ切った訳ですが、一人も合わないのは人数が少ないのではないか、となる訳です。」

 そうなのだ。牢に居た時からここまで半裸になったりしたが、一人として見なかったのだ。そのせいで上が無防備なんですけど。

「確かにそうじゃの。でも、ただ単に雇わなかっただけでは?」

「城の使用人の数が少ないのは国の沽券に関わります。もし僕なら意地でも沢山の人を入れますね。だからこそ、この国はそれさえ出来ないのでは?となる訳です。それに、忠臣の持つナイフすら満足な者を提供出来ない時点でかなり不味い状況なのでしょう。」

 この答えに納得したのか、陛下はううむ、成る程と呟き警戒を解いた。あのプレッシャーはこのお方からでしたか。・・・凄すぎない?

 この隙に畳み掛け、結論まで言い切ってしまおう。次に、異世界とスキルで解決できると主張する。仕上げに懇願!

「僕達の住んでいた場所では人間しか居ませんでした。それでも、我々がここより良い暮らしが出来ていたのは、どうしようもなく賢しいからなのです。その猿知恵を使えば、解決する可能性が有ります。更に、今回の転移に際して各々特殊なスキルを齎されました。例えば前世の知識を完璧に保有するスキルや、食べ物を見つけるスキルなど地味ですが使えると思います。どうか呑んで頂けないでしょうか?」

 ひと息で言った。酸欠になりそう。・・ハア。返事は?

「・・・要求は?」

「へ、陛下!しかしっ!」

 よっしゃ!来たこれ!ウェーイ!

「なに、我が食料問題は深刻だ。最早藁にもすがる思いであろう。此奴らの元居た世界は分からんが、少なくともそこらの雑草よりは確率が有る。で、要求はなんじゃ?申してみよ。」

 教官が無理を言うなよと無言の圧力をかける。もう鳥肌が立ったり治ったり忙しい。肌が荒れちゃうよ。せっかくツヤツヤなのに。

「庶民程度の料理を。後、牢では無く個室が欲しいと、出来れば訓練を施す機会を下さい。」

 あ、教官、ほっとしたみたいだ。良かった。

「ううむ・・・それぐらいなら良いぞ。」

 交渉成立だぁ。良かった。緊張から解放された事で一気に睡魔が来るが、まだ謁見の間だと欠伸を噛み殺した。



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