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魔法は研究するものです。  作者: しけたけ
魔法〜物理との融合〜
14/15

明るい街とフィッシング

 



 今、俺は文明を感じている。

 平家の建物、売られたゴールデンボア、土の道、売られている黄金色の豚、飛び交う罵声。そう、ここは、人ならざる者で溢れ返る町。まぁ、この世界の大半は人間でないけれどね。

 俺達は今、エニー城の城下町、エニーシングに来てる。

 街に降りて驚嘆したよ、この国が予想以上に潤ってんだもん。

 だって、場内では最高司令官でさえ満足な武器持ってなかったのに、こっちでは冒険者?て奴が豪奢な剣を掛けて歩いてるんだよ?これ、冒険者に国が滅ぼされちゃうよ?

(『あれぐらいの有象無象なら片腕で充分』ってマルウスは言ってたよー。)

 あー教官ならそうっすね、あの人、物理法則すら捻じ曲げてますもん。この前なんて高速移動で影分身作ってたし。かの有名な理科雄先生的には無理な筈なんですが、えぇ。

 あぁ、そうそう、今回は一人じゃないんだよ。

 部屋から出た途端に何処から嗅ぎつけたのか、梨花が来て、『私を城下町に連れてってー!』とか言うもんで、渋々連れて来たのさ。いや、煩くてごめんね。

「いや全然大丈夫だよ。こっちはお構いなく。」

「じゃあこの子預かっておいてくれませんか?」

「んーごめん、それは無理かなぁ。」

 苦笑しつつそれでも面倒ゴトをしっかり回避したこの人は根屋祭、今日元々一緒に見て回る予定だったんだけど、それをこのちっこいのが邪魔して来て、もう良い迷惑だよ。

(マルウスさーん!)

(あぁごめんやめて!それだけは!後生だから!)

(ごめんなさいはー?)

(いや…それは小さい事は事実ですし…)

(マルウスさーん!)

(ごめんなさいすいませんでした!)

 急に往来で土下座した俺、やばい奴じゃね⁉︎

 でもそんな事はどうでも良い!あの邪神(教官)を呼び起こされないのならそれで良い!

(…帰ったら覚えとけよ。)

 …え?

(楽しみなんだろ?確かに俺も忙しいがそんなに待ち遠しいと言われたら最優先で虐待、おっと失礼、訓練してやらないとなぁ?)

「やりやがったな!梨花テメェこの野郎!」

「わー怖いー。キャラが剥がれ落ちてるよー。」

「そんな場合じゃねぇ!今梨花のせいで俺の処刑が確定したんだぞ!どうしてくれるんだ!」

「私ーなんのことかー分かんないー?」

「畜生め!器が小さいから背も伸びねぇんだよ!」

「なんだってー?」

「身長だけじゃなくて心まで小学生並だと言ってるんだ!何かあったら直ぐチクるところとかな!」

「マルウスさーん!今までの訓練じゃ物足りないんだってー。」

(よし分かった。何時もの三倍ぐらいでいこう。)

「そう言うところだよぉ!」

「まぁまぁ下らない事はそのくらいにして、折角の街なんだから、楽しもうよ?」

「下らない言うなぁ!俺の命懸かってるんだよぉ!」

「はいはい大変ですねお悔やみ申し上げます。っとついたね、ミツリン商会。」

「うぉー!たっかいねー!」

「久しぶりに二階建て見たな…。」

 今日の最初の目的地、ミツリン商会に御来着〜。

 その外見を言うなら、この街に有るあらゆる建物を見下し嘲笑っているが如く華美に装飾されたアパート、と言った所かな。一階が店舗(完全にコンビニですありがとうございます)で二階が住居となっている。

 入店後、品々を見て廻る。

 へぇー、結構再現度高いじゃん。化粧品に、食品に、⁉︎冷凍食品まで有る!この前せがまれたドライとフリーズはこの為か〜。あ、電池じゃ無くて魔力入り魔石売ってる。身売りは行かんぞ〜?

 まぁ、上出来じゃない?元の世界には及ばないまでも、その品揃えは驚異的だ。値段も安いし、日本クオリティは脈々と受け継がれてるよ。

「あ〜!いらっしゃい英雄さん!」

 散策してると声が掛かった。いや〜英雄って照れるね。今まで変人、穀潰し、畜生、などとかなり風当たりが強かったからね、英雄呼び何て痒くて痒くて…。

「ニヤケ顔きもいねー。」

「ふっふっふ、今は機嫌が良いからどんな誹謗中傷も甘んじて受けようじゃないか。」

「…これ英雄呼ばわりして大丈夫ー?民度が疑われるよー?」

 ああー⁉︎なんだって⁉︎

「大丈夫ですよ、こっちは人でなしを庇う健気な人達って成りますから。それにこんな単じゅ、もとい純情な金づr、では無く技術者を讃えずして何になるでしょう?」

「確かにそうだねー。」

 ブファ!思わず吹き出してしまった。

「いやいや、納得するなよ!こんな天才が単純だって⁉︎」

「うん、すっごい操り易いよー?ドーリは。ねぇ?根屋君。」

「いやそんな筈ないよな、頭の良い君なら分かってくれる…なんで頭抱えてるの⁉︎」

「まさか何も考えて無かったのかと思ってね、分かってやっている物とばかり…無欲だなぁと思ってたんだけど…」

「⁉︎」

「あー、これ完璧に駄目だったようだねー。いい?この冷凍食品、特許獲っとけば金と名声が大量に入ってたんだよ?」

「まじで⁉︎」

「あとね、この前頼んだウォーターボール、あれ、上下水道の為に使わせてもらってるからね。製作者だって言えばあんなにボロ雑巾の様に言われなかったと思うよ?」

「…」

「あ、あとあのファイアーボール、国の防衛の為に大量発生したな、アレのお陰で随分狩りが効率的になったって教官喜んでたよ。城内の心象も良くなってただろうね。」

 その場でゆっくり灰になった。



 ごめーん!と言われて商会長からお金と魔道具市の存在を教えて貰った。

 魔道具とは魔法陣が組み込まれた道具の事で、電気で動く奴を『電化製品』と呼んだりするのと同じらしい。

 魔力を使えない一般人は魔石に魔力を吸ってもらい使うんだって。

 ただ、スキルを持ってないとこの魔石に篭める魔力の効率が良くないから、魔道具を使っている人は少ないらしい。説明終わり。

 いやー!気分が魔道具を上げるね!魔道具があっちこっち、魔力の閃きがあっちこっち、眩しくて眩しくて宝石の様だわ!いや、実際宝石だわ此処!

(日本語おかしいよー?ソビエト式みたいになってるよー?大丈夫ー?あー大丈夫じゃないかー。)

 お!これは洗濯板?

「おっちゃん!この板はどう使うんだい?」

「おおーそれに眼をつけるとは中々じゃねーか!これはな、洗濯物を抑えつけて洗濯し易くするものだ!」

 成る程!摩擦で汚れを落とす洗濯に置いて、抑えつけて摩擦力を増やせば間違い無く落ちるな!発想の勝利だ!

『スタンプ

 魔法陣を基準面として上面に鉛直下向きの力場を発生させる。

 この力場は無差別に作用するので洗濯だけで無く自らの手にも力がかかる。よって洗濯が便利になったとはとてもでないが言えない。

 また、力場の調節が不可能なので、洗濯物が大抵破ける。』

「どうだ!稀代の発明だろう?」

「…失敗は成功の母とも言うし、頑張れよ…」

「え⁉︎おい!どう言う事だよ⁉︎」

「強く生きろよ…魔法の道は広い…」

「おい!おいー!」

 喚くオッサンを無視してその場を離れた。オッサン、その犠牲、無駄にはしない…。

 他にも多種多様な魔道具があった。水を噴き出す扇風機、中から乾いた風を出す洗濯竿と言った役に立つ物から、滑り易い靴下、水が途切れ途切れ出る蛇口など、何の役に立つかも分からない物もある。

 全自動卵割り機は世界を越えた、とも遺しておこう。

 お!これは!

 この魔道具は凄絶だ、一線を画している…。

 これを作ったのは…梨花と同じぐらいだから、十二、三歳ぐらいか…え⁉︎若⁉︎

 その歳でこんな道具を?おじさん嫉妬しちゃう。

「そこの君!この魔道具を教えて貰えないか?」

「え?」

「これだよ、この本棚。」

「え?あ!はい!これはですね、読みたい本を自ずから出してくれる本棚です!どう言うことかと言いますと、ええと…」

 どうやらこの本棚を売っていることを思い出したらしい。

 彼はポケットを弄ると直ぐ様ソレを取り出した。ソレっていうか、完全にテレビのリモコンである。

「本棚に番号が付いているでしょう?この番号と一致する番号をこのスイッチで押すと…ひゃ!」

 彼は一番のボタンを押す。左上の本が飛び出して少年の頭に直撃した。

 わ〜結構痛いぞ、広辞苑ぐらいの厚みはあったからなあ。

「てて、この様に本が飛び出してきます。危険ですから本棚の物を取り出す時は近くに寄らないで下さいね。本は人を殺せますから。」

 さっき身をもって体験したもんね…。

「この様に本をいちいち探さなくても番号と題名の早見表さえ有れば、直ぐ様本がやって来てくれます!」

 ソレは便利だな、本が傷むのを気にしなければだけど。

「そうなんですよね…本の保護は課題です…」

 ん?俺言葉に出てた?

「あ!あと本を仕舞う時も此処に本を置いて、このスイッチを押して番号のスイッチを押すと…ピャ!」

 おおー本が吸い寄せられてくー。人の顔面に当たっても気にせず突っ込んでいくー。

 ドジだな、この子。

「この様に、本が仕舞われていきます…イテテ…」

 何はともあれ俺の欲しかった物がこの道具に揃ってるぞ!

「よし買おう!これは幾ら?」

「え⁉︎買ってくれるんですか⁉︎ありがとうございます‼︎」

「凄いはしゃぎ様だね。」

「そりゃそうですよ!初めて物が売れたんですから!」

「へぇー驚いた。こんな優秀な魔道具がずっと売れなかったの?」

「えぇ、なにせ此処の人達は『本は役に立たない』って一貫してますからね。」

「成る程。しかし、本を侮るとは良い度胸だな。」

「えぇ全くその通りですよ!」

「君とは話が合いそうだな。家に来るか?もっと話そう、魔道具の事とか本の事とか。」

「はい!是非!」

 よし、釣れた!

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