〜二万分の一に当たり転生〜
初めての作品です。
お手柔らかにお願いします。
俺、森田導理は普通の高校生だと思う。
成績は良いが運動が苦手。彼女はいないが友達はそれなりにいるような気がする。顔も平均、スタイルも平均。性格は暗くも明るくも無い。都市でも田舎でも無い高校に通っている。うん、平凡だ。
だから、なんでこうなったのか分からない。なんで目の前に神がいるの?周りがやけに白いの?教えて、神さま・・あ、こいつが神だった。
事が起こったのは夏休み明けのまだ蒸暑い朝9時だ。
「おはよう」
「おっはー」
「昨日のあれ見た?」
「なんかすごかったよねー」
教室はいつも通りの喧騒に包まれていた。話題は昨日の番組についてが多い。かくいう俺も知己の一人、坂本悟とそれについて話していた。
「どう思う?」
「偽だと思う。だって消えた人が突然東京に出てくるなんて無いって。ヤラセでしょ。」
「もードーリは夢が無いなぁ。ロマンスが無いと女子にモテないんだぞ。」
「そんな非科学的なことを信じる女子には興味ないね。」
「つれないなぁ」
そう言うと彼は端正な顔と無造作に切られたそのハツラツ感満載の茶髪を揺らした。
「そんなこと言ってていいのか?授業始まるぞ。」
その瞬間だった。地面が唐突に光り出したのだ。
「きゃっ!」
「なんだなんだ⁉︎」
次第に光が強くなっていく。
「ドーリ!これなんだよ?」
「知らないよ!少なくともこんな現象は聞いたことない!」
取り乱し気味の悟に狼狽を隠しきれずに答える。そしてそれがあたかも合図だったかのように視界が真っ白になった・・・
で、再び目を開けたらここにいたのです。え?なんで目の前の奴が神だと分かるかって?ここに居れば分かるって。オーラがヤバイ。主張が強過ぎて直視できぬ。あ、何か仰られるみたい。
「喜べ。お前たちは転生者に選ばれたぞ。」
「は?」
「え?」
やべ、思わず聞き返してしまった。怒って無いよね?声から困惑の色が伺える。
「お主達ってそういうの大好物じゃないの?」
怒って無いことに安堵しながら答える。どうやらこの神は気が大きいみたいだな。
「確かに好きな人はいますし、したいと思っている人もいると思いますけど、そこまで多くはないですね。この中には一人二人いるかどうかぐらいです。」
すると神さまの声が途端に申し訳なさそうに縮こまった。
「・・・すまない。お主達がそういうものだと聞いていたので勝手に転生させてしまった。」
「誰にですか?」
「・・・ネット見てそう思った。」
「・・・元に戻すことは出来ますか?」
「・・本当にすまない。残念ながら一度これが発動してしまったらもうわしでも止められないのじゃ。」
軽っ!いやいやそんなあやふやな情報を簡単に信じたのかよ。くそっ・・あっちの世界にはやり残した事がたくさんあるのに。研究者に成りたかったな。あれ?でも考えてみたらあっちでも研究はできるよな?いやいや親は俺の事心配する・・しないな、あれは。多分迷惑料と称して転生させる仕組みの事を聞き出すだろう。勿論憂えはするけどそれより羨む気がする。ん?思ったより少ないな。あれ?
「そうじゃな・・どんだけ頑張っても一年に一回会えるかと言ったところじゃ。申し訳ないがこれで納得してくれるか?」
「まだ会えるだけ良いです。」
未練も無いみたいだし。泣いてませんよ。これは汗です。
「そう言ってくれると助かるのう。あとお詫びと言ってはあれだが一人ずつに言語翻訳と適正に合った特殊なスキルを与えよう。」
その言葉と共に何か上からふわふわ降りてきて自分の中にすっと入った。
「他に質問はあるかの?」
「なんで僕らなんですか?もっと相応しい人もいると思いますけど。」
ほら霊長類最強のあの人とか、何処かの世界最速の電圧さんとか。せめてプロスポーツからの方が良いんじゃね?
「そう言う人は消えてしまうと大変なんじゃ。お主達の世界は情報が伝わるのが早いじゃろう。無闇に混乱させると出来ることも出来なくなるのじゃ。」
「それを言うなら僕達ごときでも十分騒がれると思いますが?」
「ある程度までなら良いんじゃよ。多分お主達が消えても日本内でしか取り沙汰されないし、割と直ぐに収まるじゃろう。三億人ぐらい迄なら騒がれても問題無いのじゃ。そして最低限の年があってある程度の教養があり、前の世界に良くも悪くも強い思い入れが無いこと。そして人数がまとまっているところ。これが条件での。」
「・・・確かに日本の高校生は最適ですね。」
「さらに、さっき言ったように日本人はそういうの好きと前情報があったからのう・・・まぁ、嘘じゃったけど。後は確率じゃな。二万分の一程度じゃな。」
「なるほど、ありがとうございました。次はどうやって」
転生させたんですか?という言葉は続かなかった。突如として周りからバキバキ!と大音量で響き始めたのだ。怖!なんか落ちて来てるって!
「あ、ヤバ!もう時間が無い!すまないがここでさよならじゃ!簡潔にまとめると、向こうでは魔法あり魔獣ありの世界じゃけど頑張って!」
え!雑っ!それに聞いてないぞ、魔法なんて。そうか、これも魔法なんだな。決めた。これを研究しよう。元の世界に帰れるかもだし。てか、周りの人達はどうしたんだろう。俺が勝手に決めちゃったけど良かったかな・・・
続いて目を開けたら急に視界が青く染まった。とっさに目の前まで来ていたその青い光から逃げようとした。が、こいつはガスみたいに広がっていて逃げる場所も無かった。これも魔法なのか?催眠の効果みたいだ。薄れて行く意識の中、威厳のある声とテキパキ感じる声が微妙な残念さを含ませて耳に届いた。というか顔見えねぇ。最近はそういうのが流行ってるの?
「ふむ、どうやら成功したようだな。しかし人間族とはな。」
「どうしますか?処分しますか?」
「いや、たとえ出来損ないでも使い潰せば良い。首輪を掛けて牢に放っておけ。」
「はっ!」
思ったより事態は深刻だったようだ。大変なところにやってきたらしい。
やばい、このままだと悲惨な目にあう。だけどこの・青い・・の・・・が・・・・
そこで意識を手放した。
その時この世界のどこかでは。
「おっし!成功だ!これは付いてる!こいつが在ればあの雑草どもを蹴散らせる!」
ある者は歓喜して、又ある者は
「くっ!失敗か。」
と落胆していた。
そしてたった今四十人弱が消えたこの場所で神は、
「頼むぞ。世界を、其処の人間達を救ってくれ。」
と呟いた。
こうしてアルノース同時異世界召喚、通称『最終兵器開発』は終わった。後にこの無能と判断された転生者三十八人の中から、世界を変える者が出るとも知らずに。
一週間に一回のペースで投稿していきます。
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