隊長さん。
「あれ、隊長さん?」
きれいな街並みを見ながらそぞろ歩いていると、見覚えのある大柄な体躯と横顔が見えた。
白銀の鎧を着用し、肩には階級を示す飾りが付いている。
「anか、何をしている?」
「観光ですよー」
「観光か、それは楽しそうだな」
隊長さんが青い目を細めて微かに笑みを浮かべる。
「ちょっと馬鹿にされてます?」
笑われてる感じがしますね!
「いや、anはのんびりしているんだなと思ってな。他の異界人は戦闘に素材集めにと走り回っているぞ。anはいいのか?」
「みんな楽しく戦闘や素材集めをしてるんです。だから、私も楽しく観光してるんです。同じですよー」
「なるほど、道理だな」
クククと可笑しそうに笑いながら、隊長さんが私の頭に大きな手を置き、軽い調子でポンポンと撫でる。
まごう事なき子供扱いですね!
「むう…」
「どうした?ああ、腹でも減ったか。美味い食事処に案内してやるぞ」
うおい!不機嫌の原因予想が空腹一択っておかしいよね!?私乙女だよ!?まったく!!隊長さん、意外と残念イケメンなのでは!?
はあ、なんか怒ったら本当にお腹空いたな。
ゲームには空腹度もあるしね。怒りでゲージが減るかは不明だけど。
「安心しろ、奢るぞ」
私の怒りには気付かず、隊長さんは上機嫌でもう一度私の頭を優しく撫でた。
「街の見回りはもういいんですか?」
「ああ、ちょうど休憩で、こいつらと昼食に行こうとしていたんだ」
隊長さんが背後に控えていた二人の隊員の方を振り返る。
先程まで小声で「隊長が笑っているだと!?」とか「女の子と話してるぞ!」とか「いつもの鉄面皮はどこに!?」とかこそこそと話していた二人が、隊長さんの視線を受けてビシッと直立不動の姿勢になる。
「……」
二人に冷たい視線をチラリと向けた後、隊長さんがうって変わった穏ややかな表情を私に向ける。
「じゃあ、行こうか」
隊長さんは私を促して歩き出した。
よし!お昼だ。奢りだ。レッツゴー!






