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夜の美学

作者: 克辺 篤姫

夜に魅せられた少年の探訪。


夜のとばりがおりたころ、少年はいつものようにベッドを抜け出して外へ出た。

街は街灯のわずかな明かりでぽつりぽつりと照らされてはいるものの、ほとんど真っ暗だった。少年は小さく息を吸って歩き始めた。


しばらく歩くと、少年は少女と出会った。少女は街灯の明かりの中で地面にしゃがみ込んで泣いていた。ずいぶん長い間ここで泣いているのだろう、コンクリートには無数の涙がまだら模様を作っており、もうすでに乾いてしまった跡さえもあった。

少年はその模様をとても綺麗だと思った。

少女が涙を落とすたび、模様は新しくなり、そしてしだいに乾き消えていく。その瞬間瞬間の変容に少年は魅せられた。少年は少女に話しかけるでもなく、少女と同じようにしゃがんでただずっと地面をながめていた。


ふと頭上に影を感じ、少年は頭をあげた。ひとりの男が立っていた。男は少女の手を、地面に引き倒す勢いで引っ張り、彼女を引きずって連れていこうとした。少女はそれに逆らい、手を振り払おうとする。男は苛立った声を発し、少女の頬を殴った。鈍い音とともに少女の口が切れ、鮮やかな赤が宙を舞った。少女は男に連れていかれた。彼女の哀しい叫びはしばらくの間夜の静寂にこだましていた。


少年は地面に残された赤い模様を見て、顔をしかめた。どうしてだろうか、少年にはこの模様がとても醜いものに見えてしょうがなかった。


冷たい風が吹き抜けた。少年は小さくくしゃみをして、それから夜の暗がりへと消えていった。

最後まで読んでくださってありがとございます。


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