1/1
髪の綺麗な女性
辺り一面真っ白の世界。僕の目の前には背中まである髪をサラッと揺らす大人の女性がいた。
不意に包み込むように抱かれたのだが、その体は小刻みに震えており
顔を覗き込むと、目元は綺麗な髪で隠れていたが下唇を噛み締め涙を流す姿が一瞬見えた。
すると、僕を遮るかのように僕の頬に大きな滴が一つ二つとこぼれ落ちてき手僕はまた下を向きなおす。
その人は謝るかのように袖で拭き取り語りかける。
いや、正確に言うのならば口では何か言っているのだろうが「声」はでていなかった。
それを理解しようと僕は何度も彼女に聞き返す。
でもその声は届く事はなく、彼女はそのまま僕から離れてしまい、僕に背を向け長い髪をなびかせながら一歩、また一歩僕から遠ざかる。
届かないと分かっていても無意識に小さな手をこれでもかと彼女に向けて伸ばしたが、無駄に終わった。
だが、口の動きで分かった。
彼女は最後に僕の名前を呼んだんだ。
吹雪 って