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短編

センチメートル

作者: 有月 晃

当作品は【世界が満たされる時、最も美しいキスシーンを。】企画出品作品です。


ハッシュタグ「セカキス」で作品検索かけてもらえば、色々な作者さんによる素敵な作品がたくさんヒットしますので、是非ともご高覧の程を。




 ― 21センチメートル ―




「キミの唇が呼んでるから」


「なにそれ。昭和のヒット曲? ピンとこない」


「じゃあ…… キミの瞳に映るオレが見たくて、ってどう?」


「無理矢理ひねり出した感。アウト」




 ― 26センチメートル ―




「わかった。さっき食べたパスタの味を再確認したくて」


「だから。余計にピンとこなくなったんですけど」




 ― 32センチメートル ―




「もう正直に言う。とにかくキスしたい。させて」


「単純過ぎでしょ。まぁ、悪くないけど」




 ― 19センチメートル ―




「いや、てゆーかさ」


「なによ」


「キスするのにいちいち理由とか、いらなくない?」


「でも、あえてそこを考えてさ、言葉にしてみようって決めたんだし」


「それ決めたの、オレじゃない」


「あー そんなこと言う人とは、二度とキスしてあげませんよー」




 ― 45センチメートル ―




「いいよ、別に。オレから勝手にするから」


「許可ナシとかダメ。絶対ダメ。親しき中にも礼儀あり!」




 ― 72センチメートル ―




「えー ちょっと、そろそろ限界なんですけど」


「知らない。コーヒー淹れよっかな。飲む?」




 ― 223センチメートル ―




 さっきから小一時間、こんなやり取りをしている。


 彼女いわく、最近の私達ってなんだか自動的に、物凄く条件反射的に、もう何も考えずにキスし過ぎてるよねと。



 朝、先に目覚めた方から、おはようキス。


 朝食の用意をするオレに、彼女がありがとうキス。


 食器を片付けてる彼女に、オレがご苦労さまキス。


 歯磨き終わったら、洗面所あいたから使っていいよキス。


 着替えてたら、私があげたそのネクタイやっぱり似合うキス。


 で、玄関で行ってきますキス。



 ちなみに、最後のはちょっと長め。



 平日の朝ですらこんな感じだから、仕事のない週末とか推して知るべし。




 ― 68センチメートル ―




「根本的な疑問なんだけどさ」


「ん。言ってみろよ」


「人間ってさ、どうしてキスするわけ?」


「さぁ? 生物学的には、諸説あるらしいけど。要するに、相手の情報収集……みたいな感じだっけか」


「へー なにそれ」




 ― 57センチメートル ―




「口臭とか唾液から、相手の健康状態を知るんだって。あと、免疫学的相性も感じ取れるらしいよ、本能的に」


「え、なにそれ凄い。ホントかな?」


「わかんないけど。あ、理系女子的にちょっと興味湧いた? 仮説検証してみる?」




 ― 43センチメートル ―




「んー まだ決め手に欠けるわ」


「わかった。じゃ、脱ぐよ」


「いや、違うから。服着て、ケダモノ」




 ― 27センチメートル ―




「オケ。今夜はキスなしって縛りにトライってことで。これ、新しいでしょ」


「あり得ないから。論点のすり替えってゆーか、もう論点どっかにブッ飛んでるから」


「そういうのも、たまには良いんじゃないかと」


「いや、しょっちゅうだから、アンタの場合」




 ― 14センチメートル ―




「ちかっ! ってか、コーヒーの匂いしかしないんですけど! 免疫とか関係なくない!?」


「相手がコーヒー好きかどうか、これで情報収集できる」


「いや、既に知ってるし。カフェイン中毒」




 ― 10センチメートル ―




「どうしてもイヤなら、やめてもいい。ただし、その場合」


「その場合…… なによ」


「オレの唇は、次の標的を探し求めることになる。主にこの辺で」


「カッコ良く言ってもダメ。ってか、やめろ、バカ!」




 ― 7センチメートル ―




「恋愛とは二人でバカになることなのだ」


「一人で勝手になってて、おサルさん」


「オレに付き合うって言っただろ。ウソつき」


「アンタ『と』付き合うって言ったのよ。だいたい『付き合う』の意味が微妙に違うから」




 ― 4センチメートル ―




「さて、ここで最終兵器の登場です」


「あ! いつの間に買ったの、そのチョコ!」


「内緒。デキる彼氏を持って幸せだろ?」


「うっさい。でも、ちょうだい」


「いいけど。ただし、口移しオンリーね」




 ― 2センチメートル ―




「もらった!」


「あ……」


「ふふーん」


「チョコだけ咥えるとか、どんだけ器用? ってか、いくらなんでもありえんわ」


「おーいーしーいー! じゃ、バイバイ」




 ― 79センチメートル ―




「……」


「なによ」


「……」


「ちょっと。そんな凹まなくても」


「……いまだ! イタダキ!」


「……!!」




 ― マイナス1.4センチメートル ―



さて。


なんかこんなのがフッと浮かんだので、ササッと書いてみました。



なお、私のもう一つの「セカキス」企画参加作品である「丹花乃口唇」とは、完全別人格モードで書いてますので。


「思ってたのと違う! なんで斬り合いシーンないの!?」みたいな苦情にはお応え致し兼ねますので。悪しからず。


でも、どうしても作者に文句言いたい人は、感想欄、もしくはツイッターにて絶賛お待ちしております。


かもんかもん。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 如月ちあきさまの活動報告から参りました、初めまして、なななんと申します。 なんと素敵な! センチメートルでこんなに情景が浮かぶ物語を見させて頂いたのは初めてです。 最後、最高に甘かったで…
[一言] ライトなものも書かれるんですね(笑) まるで、妻がこっそりと学生時代の制服を着て鏡に映して遊んでいるのを、見てしまったような心境です。 距離が出てくるのも、時間経過が数字で出てくる「冬の…
[良い点]  距離感を数値で表すところが斬新でした。情景が目に浮かびました。  21cmと聞いて、天文学に登場する21cm線を連想してしまう私がいた・・・ヘ(。。ヘ)☆パシッヽ(^^;)」
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