05
ここは、どこだろう?
冷たくて暗い。
そんな壁に、ぼくは閉じ込められていた。
たぶん、お腹の中。
ぼくは、雪に食べられてしまったことを、思いだした。
それでも、生きている。
しかし、意識がはっきりとしない。
呼吸が、苦しい。
苦しいのは、嫌いだ。
ぼくは。
ぼくはこのまま、死ぬんだろうか?
そんなことを考える。
死は怖くないはずなのに。
覚悟したはずなのに。
急に、とても怖くなった。
ぼくはマフラーを握る。
神様がしていた、色褪せたマフラーを。
すると、気持ちが落ち着いていった。
次第に、心地よい感覚に包まれていく。
懐かしい感覚。
子どものような感覚。
ぼくは、瞼の裏にセカイを眺め始める。
たくさんの色が溢れた、この美しいセカイを。
あの山で眺めた、澄みきったこのセカイを。
そうしながらぼくは、徐々に呼吸を抑えはじめた。
小さく、小さく。
擦れていくセカイに揺蕩いながら。
霞んでいくセカイに感謝しながら。
風が鳴き、草木が揺れる。
雪が吹き、大地は煌めく。
優しい言葉に、切ない記憶。
降り積もる願いに、流れ往く想い。
その心地よさに抱かれて。
凛とした空気に包まれて。
ああ。
そうだ。
ぼくは。
ぼくはいま、雪のなかにいる。