02
家に帰るとぼくはストーブに薪を入れ、火をつけた。完全に室内が暖まるまでには時間がかかるから、その間に椅子を二脚用意した。ひとつはいつもぼくが使っている簡素なもので、もうひとつは立派な揺り椅子だった。揺り椅子はぼくが小さい頃には既にこの家にあったもので、恐らくは前の家主が愛用していた椅子だろう。ぼくはそこに神様を座らせて、ブランケットを膝にかけた。
ぼくは考える。
神様を家に連れてきてしまったわけだけど、この行いは良かったことなのだろうか?
すこし考えてみたけれど、よくわからなかった。
逆にどうしてダメなのかも、わからなかった。
良い悪いを除いて考えたとして、ぼくが、どうしてこんなことをしているのかさえわからなかった。
頭を悩ませた結果、ぼくはすべてを天啓ということで片づけることにした。
この行動にはきっと、きちんとした意味があるのだろう。
そう思うことにした。
薪がぱちぱちと音をたてる。
それ以外に音はない。
ぼくはただじっと、椅子に腰かけたままストーブを眺め続ける。
部屋が大分温まってきた。
同時にストーブの天板に鍋を置いて、ぼくは料理を作り始める。
料理といっても、ぼくはあまり料理が得意な方ではないので、できたものはリミトミルの実をただミルクで煮て、小麦粉でとろみをつけただけの簡素なものだった。この料理にどれほどの栄養があるのかわからないけれど、ここ数年ぼくはこれしか食べていないので、たぶん、そこそこに栄養はあるのだろう。
ぼくはスープをすする。
熱い。
息を吹きかけ、すこし冷ます。
すする。
果汁が溶けだしたミルクはほんのりと甘く、爽やかな香りがした。
お腹が熱くなるのを感じて、ようやく躰が休まったと感じた。
一応で料理は神様の分も用意していたけれど、当然のことながら神様は一切手をつけなかった。
笑顔のまま。
動かずにいる。
これで意外と、偏食家なのだろうか?
好き嫌いをする神様をイメージして、ぼくはくすりと笑う。
くたくたになった果実をスプーンで口に運ぶ。
甘味はスープに溶け出ているから、果実はただ香りのついた繊維物といった感じだけど、それでも十分に美味しかった。
明日は、どうしようかな。
そんなことを想いながら、窓の外に浮かぶ夜空を眺める。
空は雲一つない綺麗な星空で、時折遠くで流れる火の軌跡が美しかった。
食事を終えて、ぼくは熾火の上に薪を置いた。
それからしばらく椅子に座ったまま、物思いに耽る。
途中途中で思いだしたかのように横目で神様を確認する。
確認するたびに、ぼくは安堵する。
弁を調節し、ストーブ内の空気を絞る。
赤々と輝く火を眺め、うとうととぼくは眠りについた。
静かな夜。
けれど、賑やかな夜だった。