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偽りからの挑戦 ――絆の脅威――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 †亀裂† ――ルイン海上――
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第8話 旗艦爆破事件

※フィルド視点です。

 【ルイン海上 クリスター政府軍・中型飛空艇】


 連合軍との戦いに勝ってから1時間。旗艦に集まっていた各部隊の将官たちを各艦に戻し、私たちは撤退を始めた。旗艦であるこの中型飛空艇に乗る将官は、私、シリカ、ソフィアの3人だ(パトラーも別の中型飛空艇に移動した)。

 私は最高司令室の窓から外をぼんやりと眺めていた。空は暗くなり、下は真っ暗だ。都市のように美しい夜景は拝めない。……当然だ。この下は一面、海なのだからな。


「フィルド中将、そろそろお休みになってはどうでしょうか?」


 あくびをしながら外を見ていると、後ろから1人のクローン兵が声をかけてくる。


「ああ、そうだな。それじゃ、後は任せたぞ」

「分かりました」


 私は窓際から最高司令席の方へと歩いていき、その後ろにある灰色の大きな扉を開ける。扉は左右にスライドして開く。


「お疲れ様でした!」


 扉の付近に立っていた警備のクローン兵が私に慰労の言葉をかける。私は手で軽く合図し、部屋を出ていく。灰色の壁と床で造られた廊下をしばらく歩いていると、前からシリカがやってくる。


「シリカ、先に休ませてもらうぞ」

「ああ、了解。あ、ソフィア見なかったか?」

「ソフィア? いや、見てないな」

「……そうか」


 シリカはそう言うと、最高司令室の方へと向かって歩いていく。そう言えば30分ぐらい前に最高司令室を出ていったきり、ソフィアの姿を見かけていない。どこへ行ったのだろうか?

 私は廊下を歩いていき、自分の個室へと入る(もっとも、シリカやソフィアと一緒の部屋だが)。部屋に入ると、黒いブーツを脱いでベッドに転がる。


 政府首都ポートシティに戻ったら今度はネオ・ヒーラーズの問題がある。私たちが戦っている間に、何か進展はあっただろうか?

 それと、クラスタの公邸爆破事件の件もある。あの事件の仕業はネオ・ヒーラーズによるものか、連合政府によりものか、それとも全く違う第三者によるものだろうか?

 この戦いが終わっても、まだゆっくりすることは出来ない。ゆっくりできるようになるのは、連合政府を裏で操るパトフォーを倒した後だろう。ヒーラーズの件にも、あの男が絡んでいるのかも知れない……。


 しばらくベッドでウトウトしていた時だった。突然、激しい揺れが私を襲う。一瞬にして目が覚める。なんだ、地震――いや、ここは空中だ。あり得ない。だとしたら――

 私は黒いブーツを履き、部屋から飛び出す。廊下には薄く煙が充満していた。大勢のクローン兵たちが走り回っている。警報が鳴り響いている。


「なにがあった!?」

「わ、分かりません、爆発のような音が……」

「爆発だと!?」

「は、はい」


 私は左手首に装備した小型通信機を起動させ、最高司令室にいるシリカと連絡を取ろうとする。彼女はすぐに出た。


「シリカ、今のはなんだ!?」

[ば、爆発だ! エネルギー・プラントで、――]


 そのとき、再び爆発のような音がし、辺りが揺れる。さっきほどではないが、それでも倒れそうになる。壁にもたれ掛る。


[全兵に告ぐ! 直ちに本艦から他の飛空艇に退避せよ! 繰り返す! 全兵、直ちに本艦から他の飛空艇に退避せよ!]


 廊下中に退避命令が響き渡る。それを聞いたクローン兵たちは、一斉に飛空艇プラットホームに走って行く。

 この中型飛空艇を含め、一般的に飛空艇はいずれもエネルギー・クリスタルからエネルギーを精製している。そのエネルギーで飛空艇は浮かび、飛ぶことが出来る。エネルギー・プラントが破壊されれば、飛空艇は完全に電力を失い、墜落する。ただ、予備エネルギーがある。1時間程度なら持つだろうが……。


「シ、シリカ――」

[今、命令を出した通りだ。もうこの飛空艇は持たない。退避するぞ]

「……分かった」


 私は通信を切ると、小型飛空艇プラットホームとは逆の方向、エネルギー・プラントへと足を進める。偶然に起きた事故か? それとも、ネオ・ヒーラーズか連合政府の仕業か? それを確かめたかった。

 小型飛空艇プラットホームへと逃げていくクローン兵と何度もぶつかりながら、30分ほど走っていると、やがてエネルギー・プラント付近のエリアへと辿り着いた。


「…………」


 一帯は瓦礫と火の海だった。エネルギー・プラントは完全に吹き飛んでいる。恐らく、エネルギー・クリスタルが爆発したのだろう。これだけ酷いと、すぐには証拠や手がかりを見つけられそうにない。


「フィルド、考えることが同じなのは、クローンだからか?」

「…………! シリカ!」


 私の後ろには3人のクローン兵を従えたシリカがいた。


「もうダメそうだな。ここは退避しよう」

「その方がよさそうだな」


 私はシリカと共にその場から小型飛空艇プラットホームへと走って行こうとした時だった。すぐ近くで呻き声が微かに上がる。――誰かここにいるのか? いや、まさか、ここを爆破した犯人か!? 私たちはそこから呻き声のした方へと走る。


「…………!?」


 すぐ近くの廊下に倒れていたのは、1人のクローン将官だった。髪の毛の長い彼女は、右脚から大量の血を流していた。――私たちは彼女を知っている。


「……ソフィア、なぜここに?」

「っ、く……!」

「ソフィア大将!」


 3人のクローン兵がソフィアに走り寄り、1人が床に突っ伏していた彼女を背負う。そのとき、エネルギー・プラントの方で小さな爆発が起きる。爆風が伝わってくる。


「ひとまず、脱出するぞ」

「イエッサー!」


 私たちは徐々に傾きつつあった廊下を走って行く。今は考えている場合じゃない。……ただ、廊下を走る私の頭には、またイヤな可能性が浮かんでいた。――この爆発とソフィアの関係は……。

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