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偽りからの挑戦 ――絆の脅威――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 †理念† ――シリオドア・ノース――
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第18話 クリスター政府VSネオ・ヒーラーズ

※スギライト視点です。

 私は刀の柄を握り締め、その場から地面を蹴って飛び出す。完全にフィルドの息の根を止めるには、首を斬り落とすのが一番確実だ。


「スギライト上級幹部!」


 煙の中から血まみれのフィルドが出てくる。瀕死のようにも見えるが、まだそこには強い戦意と殺意があった。さすが、クリスター政府の最高戦力だ。世界最強の戦士に違いない。


「……パトラーに、なにをした……」

「えっ……?」


 フィルドは拳を握り締めると、勢いよく目の前の『空間』を殴りつける。殴られた空間がゆっくりと歪んでいく。最強の破壊魔法――ラグナロク魔法だ。エデンも使った最凶の魔法。

 歪んだ空間が轟音を立てながら吹き飛び、激しい衝撃波が巻き起こる。近くにいた数十人のクローン兵の姿が消える。――吹き飛ばされたといえば間違いないが、その身体はバラバラになっていた。一瞬にして肉体を引き裂き、その命を奪い去った。

 衝撃波は耳が痛くなるほどの爆発音を立てながら地面を砕き壊していく。ひっくり返された地面が宙を舞う。何百、何千ものクローン兵も一緒に空へと打ち上げられる。


「フィルド!」

「…………!」


 私は足に衝撃波を纏い、空中を蹴りながらフィルドに迫る。飛んでくる瓦礫や衝撃波を刀で斬り、進む道を斬り開く。

 重傷を負っていたフィルドの反応が遅れた。私は彼女に向かって刀を振り下ろす。鋭い刃が、後ろに飛んで逃げた彼女の身体を深々と斬り付ける。


「あっ、ぐッ……!?」


 フィルドは身体から大量の血を迸らせながら、後ろへと飛ぶ。だが、上手く着地することはできず、瓦礫だらけの地面に何度も体を打ち付けながら倒れこむ。もう少しで首を飛ばせそうだったが……。

 私はトドメを刺そうと、横たわるフィルドに向かって走っていく。またとないクリスター政府最高戦力を討ち取れるチャンスだ。逃しはしない……!


「スギライト上級幹部っ!」

「…………!?」


 突然、私の目の前に誰かが現れる。現れた人物は握り締めた拳を私に向かって繰り出す。それは私の右頬に叩き込まれ、フィルドとは真逆の方向に弾き飛ばされる。


「――――ッ!」


 私の手から刀が離れ、身体は何度も激しく地面を転がりながら、フェールやアイオライトの側にまで戻される。


「ア、アレはっ!?」

「残念です……」

「ぅ、ッ……?」


 残念? なにがだ?

 私は遠のきそうな意識の中、必死で立ち上がろうとする。ぼやける私の視界。だが、そこには確かに“残念なもの”を捉えた。


「ク、クリスター、政府軍……?」


 空に浮かぶ5隻もの白い中型飛空艇。向かってくる何十機もの白いガンシップ。そこから降り立つ数百人近いのクローン兵。まぎれもなくクリスター政府軍だ。

 フィルドの側には、銀色に青いラインが入った装甲服を纏ったクローン兵が立っている。ヒーラーズ系クローン将官のアーカイズだ。そうか、さっき私を殴ったのは――


「作戦は失敗です……。プレナイトさん、CP4を始末してきてください……」

「…………」


 黒いローブを纏った魔導士プレナイトはゆっくりと空に浮かび上がる。手に持っていた白銀の杖を戦場に向ける。先端の紫色の水晶が怪しく光り、そこから一筋のレーザー光線が飛ぶ。煙に満ちた戦場で爆発が起こる。それが済むとプレナイトはゆっくりと降りてくる。


「ありがとうございます……。頭を貫けば、さすがに生きてはいけません……」


 プレナイトは口端で笑みを浮かべ、何度も頷く。どうやらプレナイトはさっきのレーザー光線でCP4の頭を貫いたらしい。


「作戦は失敗したか」

「もはやこんな辺境に用はない」


 私たちの後ろで、数人の男性が口を開く。黒いスーツを纏った男性たちが蔑むような目を向けていた。――連合政府や国際政府の幹部たちだ。


「クローン国家の承認損だな」

「性奴隷どもの国ができるとは、世も末とはこのことだ」

「なんだと貴様ら!」


 すぐ近くにいた一般幹部のアマゾナイトが額に青筋を立てながら、連合政府、国際政府幹部たちに向かっていく。同じ一般幹部のセレナイトが、後ろからアマゾナイトを止めに入る。


「離せっ、セレナイト! 今のは許せない! ぶっ殺してはらわた引き抜いてやる!」

「う、うわっ……!」


 アマゾナイトの気迫に恐れを抱いた既存国家の幹部たちが、逃げ出すようにして小型飛空艇へと入っていく。黒色の小型飛空艇はゆっくりと浮かび上がり、戦場を背にして飛んでいく。

 連合政府は最初にクローンを作った組織だ。量産型戦闘員として製造されたが、中には性奴隷にされたクローンもいた。彼らは私たちを人間として見ていない。彼らの中では私たちは道具程度だ。


「いつか、絶対に殺してやる」


 気の強いアマゾナイトは吐き捨てるように言う。

 やはり、ネオ・ヒーラーズ、連合政府、国際政府、シリオード帝国、ビリオン=レナトゥスの5勢力が共生することはない。クローンの、クローンによる、クローンのための新国家という基本的理念の部分で他の4勢力と共にできない。


「クリスター政府軍が撤退しました」

「了解、アイオライト」


 フィルドを助け出したのか、クリスター政府軍の中型飛空艇艦隊は一斉に撤退を始めていた。一連の作戦は完全に失敗に終わった――。

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