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偽りからの挑戦 ――絆の脅威――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 †真相† ――クリスター政府首都ポートシティ――
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第11話 極秘任務

※クラスタ視点です。

 混沌を極める連続爆破事件。


 黒い歯車は、白い夢を切り崩そうと暗躍を続ける。


 黒いレールを進む白い夢。


 だが、その混沌は突如として晴れる。


 狂い出した歯車は、白い夢を噛む――














































 【クリスター政府首都ポートシティ 飛空艇離着陸場 第1会議室】


 窓からオレンジ色の光――夕日が射し込んでいる。私は会議室の席に座り、外を眺めていた。太陽が西に沈み、空は東から徐々に薄暗くなり始めている。


 ソフィアが逮捕されて1週間。クリスター政府特殊軍の分裂は確実なものになり始めていた。分裂の芽は急速に育ちつつある。

 今日、クリスター議会安全保障特別委員会で、野党議員は防衛大臣の私にヒーラーズ系将官を罷免するよう求めてきた。与党からも同様の声が上がっている。

 今日、ヒーラーズ系クローン将官がソフィアの即時解放を私に求めてきた。応じられなければクリスター政府特殊軍を退任することも検討しているらしい。

 今日、フィルドがソフィアに対する取り調べと一連の事件の捜査を行うように私に求めてきた。それと同時に、ソフィアの罷免を求めてきた。


 ソフィアの罷免とヒーラーズ系クローンを将官の地位から一掃することを求めるフィルドは、与野党の議員や防衛省の官僚と結びつき、攻勢を強めている。その根底にあるのはパトラーへの個人的な想いだ。


「クラスタ防衛大臣、このままではヒーラーズ系クローンが離脱するのは時間の問題です。もし、彼女たちが離脱すれば、約50万人の兵を失うことになりかねません」

「ああ、深刻な問題だ。恐らく50万人じゃ済まない。警備軍所属のヒーラーズ系クローン50万人も退任するかも知れない」

「彼女たちがネオ・ヒーラーズに加われば、兵力は110万人に膨れ上がります。そして、シリオード帝国、連合政府、ネオ・ヒーラーズで同盟を組めば、間違いなく相当の脅威になります」


 私の右隣に座るコミットが資料を手にしながら言う。

 幸いなのは、シリカやコミットを中心とする連合政府系クローンがヒーラーズ系クローンの排除を求めていないところだ。もし、求められていたら、もう終わりだ。亀裂が分裂になる。


「今重要なのは、連続爆破事件の真犯人を見つけることだ。恐らく、ソフィアらヒーラーズ系クローンがやったワケじゃないだろう。少なくともソフィアが主導したとは考えられない」


 私の左隣にいるシリカが言う。

 私もシリカと同じように考えていた。ただ、パトラーがやったとも考えられない。だからと言って、ソフィアがウソを言っているとも思えない。


「……とすれば、パトラーにソックリな姿をした何者かがやっている可能性が高いな」

「恐らくは……」

「ただ、調べるとなると時間がかかる。真犯人の狙いがクリスター政府特殊軍分裂なら、もう充分だ。すでにポートシティにいないかも知れない」

「…………。捜査時間を稼ぐ」


 私は椅子から立ち上がり、ゆっくりと窓の方に向かって歩いていく。左側からオレンジ色の光が私の頬を照らす。


「――ヒーラーズ系クローンの要求通り、ソフィアを解放する。そして、彼女らと一緒に事件の解明を進める」

「フィルド中将にはなんと説明しますか?」

「アレが一度根に持つと簡単には収まらないぞ」


 フィルドと一緒にいる時間が私やコミットよりも遥かに長いシリカが言う。コミットが懸念すること、シリカの言うこと、間違いないだろう。

 もっとも、ヒーラーズ系クローンの一掃を求める一部の連合政府系クローンや議会議員、防衛省官僚らがフィルドを担ぎ上げて攻勢を強めることの方が厄介だが。ただ、彼らは表だって罷免を求める気はないらしく、フィルドの影に隠れてコソコソと動くだけだ。

 言い方が悪いが、フィルドがいなくなれば円滑に動ける。ソフィアを解放し、ヒーラーズ系クローンとの融和を図れる。一時的に議会議員・防衛省官僚の動きを封じられる。


「クラスタ防衛大臣、フィルド中将が参ったようです」

「……カルセドニー、お前は席を外せ」

「イエッサー!」


 ヒーラーズ系クローンのカルセドニー中将は、第1会議室の扉を開ける。扉の前で待機していたフィルドとパトラーが入ってくる。入れ替わるようにしてカルセドニーは部屋を出ていく。私は元の席に戻る。


「……何の用だ?」


 フィルドは冷たい目で私を見ながら言う。彼女からすれば、ソフィアはパトラーを犯人に仕立て上げようとする極悪人。そんなソフィアを庇う私に対して不満があるのだろう。


「これから1人でシリオード大陸に向かい、ネオ・ヒーラーズの状況を調べてきてほしい」

「……分かった」

「これは極秘任務だ。この部屋にいる者たち以外は知らない。絶対に他言するな」

「極秘任務?」

「……ネオ・ヒーラーズと内通するクローンがいるらしいからな」


 私は笑みを浮かべながら言う。


「…………。そういう事か」


 フィルドも笑みを浮かべる。すぐに彼女はパトラーと一緒に私たちに背を向け、第1会議室から出ていく。また入れ替わるようにしてカルセドニーが入ってくる。扉が閉じられる。――上手く引っかかったな。


「カルセドニー、ソフィアを解放する」

「…………! ありがとうございます!」


 ソフィアの側近でもあるカルセドニーの表情がぱっと明るくなる。ソフィア解放を宣言した私にコミットが話しかけてくる。


「もしかして、さっきのはフィルド中将を首都から離れさせるための任務、ですか?」

「……察しがいいな。ただ、普通任務の形式だと、さすがのフィルドも勘付くだろう。だから、極秘任務という形式にした」

「カルセドニーに席を外させた“演出”も、――」

「――もちろん、フィルドに首都から離れて貰うための作戦だ」


 私はニヤリと笑いながら言う。

 極秘任務形式にしたのはもう1つ意味がある。フィルドが首都から離れたら、反ヒーラーズ派は動きを止める。ソフィアが解放されたら、反ヒーラーズ派はフィルドと連絡を取ろうとするだろうが、肝心のフィルドがどこにいるのか分からない。フィルドに連絡がいかなくなる――。


「さて、真犯人を暴きに行くぞ――」

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