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赤と黒、そして光  作者: 水島順太郎
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序章~はじまり、新しい地へ~(8)

そこには長年放置されていたせいか、ずいぶんと汚れた字ではあったが、確かに『神代』と書かれていた。

「ふぅ・・・」

ようやく、だ。心の中でそう思いながら、家の扉へとつながる、土へ埋め込まれた大きな石を踏みしめた。

玄関の前に立つと、カバンの中から母親にあずかった家の鍵を取り出し、そっと鍵穴へと通した。

カチャリ、と鍵に開く音がしたのを確認して横へのスライド式の扉を開けると、暗闇とともに、なんだか懐かしいにおいがした。いわゆる『おばあちゃん家のにおい』というやつである。

祖父母が亡くなってから、この家には電気やガスが必要なくなって供給されていなかったが、俺の引っ越しが決まった時に母親が頼んでまた通してくれるようにしておいてくれたらしく、スイッチを入れるだけで電気はもちろん、ガスも問題なくついた。

思った通り家の構造は二階建てで、広い敷地と同様にずいぶんと大きい。田舎らしく二階へと上がる階段は急で、落ちようものなら大けがは免れないであろう。

一通り今日から暮らすことになる家を見て回った後は、今朝母親が持たせてくれたおにぎりを夕食としていただくことにした。

朝が少し遅かったこともあって昼ご飯は食べなかったが、そのせいでかなりおなかが減っている。

おにぎりでは少々物足りない気がしないでもないが、今日一日の疲れで体が限界を迎えていたため、今からどこかへ何かを買いに行こうとはとても思えなかった。

第一、こんなところにスーパーやコンビニがあるとは思えず、ひょっとしたらあの駅の南にあるコンビニが一番近い店なんてこともあるかもしれない。

「早く食おう」

そんなことばかり考えていると気が滅入ってくるので、今日のところは母親が持たせてくれたこのおにぎりで我慢するとしよう。

いただきます、と心の中で言って、朝食以来の食事にありつく。

食べ慣れた母親の味がして、なんとなく懐かしい気がしたのは気のせいであろうか。おかか味のおにぎりは俺の好物なので、美味しかったということもあったが、今日をもってしばらく母親の味を堪能できる機会がないということが、一層おにぎりの味を味わい深いものにしてくれた。

三個あったおにぎりをすべて平らげると、腹も膨れて体が安心したのかどっと疲れが押し寄せてきた。

早く風呂に入って寝てしまおう。そう思い風呂場へと向かう。


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