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赤と黒、そして光  作者: 水島順太郎
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序章~はじまり、新しい地へ~

どうも、水島順太郎です。この作品の見どころはズバリ、謎を解くところにあります。一見簡単そうに見えるものでも、実はそうでなかったりするものです。また、一連の出来事の黒幕はいったい誰なのかを考えながら読んでみるのもいいかもしれません。

しかし、純粋に高校生にありがちな恋愛要素も多分に含んでいます。ですから、推理+恋愛+ファンタジーといった感じでしょうか。

まあ、とにかくすべては読んでからのお楽しみということで。

更新はただいま忙し意味なので不定期になるかと思いますが、最後まで付き合っていただけたら嬉しいです。

それではどうぞ、謎解きの世界へ。


執筆開始:2015年5月18日

   

朝、目が覚めるとそこは見慣れた自分の部屋だった。俺の目には今、部屋の白い天井が映っている。

「ふぁ~あ・・・」

大きなあくびをしながら辺りを見渡すと、ベッド以外何もない殺風景な部屋があった。

好きで何も置いていないわけでもないし、家具を買う金がないわけでもない。俺の家はいたって普通の家庭だ。普通に暮らしていくには問題ないくらいの経済的余裕はある。

ではなぜ何もないのかというと、今日をもってこの部屋とはお別れになるからだ。つまり、引っ越しである。

ベットの脇に用意してあった着替えに素早く身を通し、もう訪れることもないであろう部屋を最後にゆっくり見渡す。

「・・・お世話になりました」

最後に一言そういって、俺は部屋の扉をゆっくり閉めた。

二階にある俺の部屋から会談で一階に降りると、いいにおいが漂ってきた。どうやら母親が朝食を作っているらしいが、メニューは何だろう。そう考えながらリビングにつながる扉を開けて、中に入る。

「おはよう母さん」

エプロンを身に着けてリビング、ダイニングから見ることができるようになっているキッチンに立つ母親に朝の挨拶をすると、すぐに元気な声で返事が返ってきた。

「あら、おはよう和也。どうだったこの家最後の夜は。よく眠れた?」

基本的に俺は睡眠不足になることはない。毎日規則的な生活を心がけているため、健康に関しては今のところ全く問題はないのだ。

「よく眠れたよ。いつも通り」

なのでそう答えると、母は安心したようににっこりと笑った。

朝食の用意が整い、母と二人で席につくと、母はものすごく申し訳なさそうに言った。

「ごめんね和也、この家で最後の食事なのにこんなものしか用意できなくて」

俺はざっとテーブルの上に広がったものを見てみる。白いご飯に味噌汁、焼き魚、煮物と日本人が食べる朝ごはんとしては申し分ないメニューであったが、どうやら母は『最期の食事』というのにこだわっているらしく、豪華なものを用意してやれなかったことを悔いているようだ。

「いや、十分だよ。それに最後だからこそ、普通の食事で俺はいいと思うよ」

正直なところ、これが俺の偽らざる本心だった。逆に朝から豪華な食事がテーブルに並んでいたら、落ち着いて食事を済ますことができないだろう。

「本当?ならよかったわ。たくさん食べてね」

そう言うと、母も自分の分を食べ始めた。それを見て俺も自分の者に手を付け始める。

しばらく食器と箸がこすれるような音や味噌汁をすする音が続いたが、ふと母が思い出したように話し始めた。

「和也、あなたの荷物はもう引っ越し先に送ってあるから、今日この家を出るときは何も持っていかなくて大丈夫よ。和也の部屋の掃除は、昨日自分で大体済ませたと思うけど、最後に私とお父さんで仕上げにやっておくから心配しないでね」

俺が引っ越すところは聞いた話によるとかなりの田舎で、ここ東京と比べると腰を抜かすくらい不便な場所らしい。具体的なイメージはまだ全くわかないが、両親があれほど強くいったということは、相当なものだろう。

ちなみに俺の父親は連日仕事で忙しく、今日も朝から出勤である。その父の仕事の都合で引っ越すことになったわけだが、それが決まったのがつい二か月前。本来ならばもっと早く決まってもいいものだが、そこは父の会社の事情というやつだろう、俺も詳しくは知らない。しかし、俺の通っていた高校の担任やその他もろもろにその事情を話し、さらに転校先の学校への手続きなど、いろいろと面倒なことが多かったのは事実だ。今になってもそれを思い出すだけで体がだるくなってくる。

そんな事情で俺はこの春、新学期の始まりに間に合うように新しい場所である、今はもうなき母方の祖父母が生前使っていた家に一足早く引っ越すことになったが、父はまだ転勤の手続きが完了していないらしく、新しい転勤先への移動は、もう少し先になるとのこと。そして母も父についていくといった具合である。したがって、両親がこの家を離れるのはもう少し先になるのだ。

つまり、今日をもって当分の間両親とは会えないということになるが(父との別れの挨拶は昨日のうちにすでに済ませてある)、その父の転勤先というのが・・・。

「それについては、悪いけど頼んだよ。それで・・・、父さん本当に大丈夫なの?」

「う~ん、あの人のことだから何とかなるとは思うんだけど」

父の転勤先、それはアメリカである。海外である。俺が心配しているのは英語がきちんと話せるのかということだ。仕事やっていけるのだろうか・・・。

ちなみに母親は、学生時代留学の経験があるらしく、英語はそれなりに話せる。転勤が決まってからのここ二か月、父は忙しい仕事の合間を縫っては母に英会話を教わっていたが、果たして身についたかどうかはわからない。

それでも母も俺も本当のところは大丈夫ではないかと思っている。何せうちの父親は、結婚する前母と出会ってすぐのころ、『ママチャリで日本一周してくるわ』と言って本当にしたという武勇伝を持っている。最初は母どうせ口だけと信じなかったらしいが(当たり前)、本当に達成してしまったと聞いた時は心底驚いたという。その後親しく話をするようになり、あとは流れで結婚、というわけである。

「多分、ね」

だから今回も何とかなってしまうというのはいささか楽観視が過ぎるであろうか。まあ、いざとなれば英語が話せる母がいるのだから心配はしていないが。

「じゃあ、俺行くわ」

朝食を済ませたあと、ほとんどない荷物をまとめ、俺は玄関で靴に足を通しながらそういった。

「じゃあ、しばらく会えなくなるけど、気を付けて」

「ああ、心配いらないよ。俺の生活スキルは知ってるだろ?」

そう、俺は一応料理や選択、掃除といった家事はできるのだ。父ほどではないが、母も仕事は忙しいため、自然と幼いころからそういうことをする習慣は身についた。

「そうね・・・そうよね・・・・・・」

しかし、それでもなお、母の顔は暗いままだ。

「母さん、あの事ならもう心配いらないって。完全に立ち直ったよ」

母が心配するのも無理はない、あの時は本当に参っていたのだから。でも、それももう大丈夫だ。そんな思いを込めて俺は力強く、言い聞かせるように母に言った。

「うん、わかった。もう心配しない」

その思いが通じたのか、母はそれ以上暗い表情は見せなくなり、代わりに笑顔で見送ってくれた。

「じゃあ・・・また電話とかするから」

「うん、元気でやるのよ」

最後に満面の笑みとともに手を振ってくれた母をしっかりと目に焼き付け、玄関の扉を閉めた。





             
















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