赤い雲の仕事
暗闇をひとつの影が動いている。影の進路の先には1台の馬車とそれを囲むように野営のためのテントが張られている。
テントの中では2から3人の人間が睡眠をとっている。テントは5張であった。テントの外では3人の人間が見張りのために火の周りで監視をしていた。
見張りは一瞬暗闇の中に動くものがあったと感じたが何かが動いた音も気配もしなかったため気のせいとしてすぐに忘れて他の2人との会話を再開した。
見張りが感じたものは馬車に近づいている影であった。その影が近づいている馬車は派手な装飾が施された、見るからに金持ちの所有している馬車であった。
音もなく見張りを避けテントの中で寝ている者たちを起こさないように馬車に近づき、静かに馬車のドアを開けた。馬車の中では片側に椅子があるのはふつうと一緒だが反対側の椅子が違った。そこは椅子ではなくベッドとなっていて馬車の持ち主がベッドの中で深い眠りについていた。
寝ている人物を表す言葉があるならそれは成金であろう。馬車の内装も不必要に金が使われており寝ている人物の特徴を表していた。
侵入した影は全身を黒の服で覆っており肌が出ている部分が目の部分だけの服を着ていた。黒以外の色は服の胸の部分にある赤い雲の模様だけが唯一の特徴であった。ベッドの人物に近づき人物の顔を確認するような動作をした後、腰に着けている短剣を抜き寝ている人物の首に近づけた。
入ってきたときと同じように音も気配もなく馬車を後にした影は誰にも気づかれることなく闇に溶けて消えていった。