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衆の子、毛利の子  作者: ルビー
第5章・中国暗雲
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第48話・直家の高笑い

【天正7年・毛利元広”月山富田城】

鳥取城への交渉が終わった後、俺たちは来るであろう中国動乱に向け準備をしていた。

そしてそろそろ羽柴秀吉に会えるかなー。などと呑気なことを考えている間にその知らせは届けられた。


「元長殿、元広殿、ついに来ました」


元秋殿が持ってきた書状には待っていた?知らせが届いた。


「南条離反か。

 ついにこの時が来たな」


「南条が裏切ることはもう分かりきっていましたが」


「元長殿、元広殿、これから忙しくなりますよ。

 覚悟してください」


【天正7年・吉川元春”天神山城下”】


ついに山陰の伏兵が真の姿を見せたか。

南条が立ったとするとここの殿様も何をし始めるかわかったもんじゃない。

ここの殿様は変人らしいし死なないうちにここから脱出しなければなるまいな。

さすがにここまで粘るのは危険だったか。

まあよい。毛利家に宇喜多の情報。それなりに流せただろう。

配下の者を連れて……


「もう遅かったか」


「吉川元広殿、我々についてきていただきたい」


「明石か。いいだろう。手は出すなよ」


「ええ、もちろんです」


【天正7年・”天神山城”】


「殿、城下にて吉川元春を捕縛いたしました」


「そうか。予定通りやったか。よかろう。

 明石よ。吉川をしっかり監視しておれ。何をしでかすかわからんから、

 手足を縛っておくのもよいかもしれんな。

 なんせ毛利の次男。あれほどの武勇を誇ったものなのだからな。はっはっはっはっは」


「殿、すべてのことがうまくいっておりますな。

 殿の時勢を見る力もなかなか侮れませんな」


「おぬしもわかるであろう。

 何事も裏切る時が重要だと。

 自らの有益になるものに付き、雲行きが怪しくなってくるとまた別のものに付く。

 それこそがこの乱世の中で生き残るための常識じゃ。

 これをやっていかなければわしらはやっていけんのだからな」


「おっしゃる通りです」


「だがそれがあるからお前も信用できんがな」


「心配には及びません。

 まだまだ宇喜多家には青空がございます」


「ふっ。そうか。

 ならば安心じゃ。はっはっはっはっは」


「左様でございます」


「はっはっは。はは。

 おい、行長は居るか」


「ここにおります」


「行長よ。毛利に行って来い」


「毛利に?吉川殿を捕えたことを伝えに行くのですか」


「馬鹿者が。そのようなことするわけなかろう。

 吉川元春が捕まったことも知らずに忙しく戦準備をしている毛利の連中を見てくるのだ。

 面白いだろう。はっはっはっはっは」


「はあ。承知しました」


「そうじゃ。毛利の人間に会ったら、宇喜多は決して毛利を裏切りませんと言っておけ。

 それで、それを聞いた毛利の人間の表情を見ておれ。

 どの口が言っているといわんばかりの顔をするだろうからな。はっはっはっはっは」


「は、はい。承知しました」


「これは面白うなるぞ。はっはっはっはっは。はっはっはっはっは。ぎゃっはっは……」


「……失礼します」


【天正7年・羽柴秀吉”姫路城”】


「官兵衛、毛利が崩れ始めたな」


「ええ、南条の織田への帰属。

 別所への救援砦の落城。

 荒木村重の花隈城への逃亡。

 毛利の東方面はすでに機能しません。

 それに宇喜多。我らが有利になりつつあります」


「官兵衛よ。

 酒を用意しろ。

 飲みながら西へ行くぞ」


「そう思って、もう用意しております」


「はっは。さすが官兵衛よ。これからも頼むぞ」


「お任せください。

 宇喜多が動けば私の実力。

 再びお見せいたしましょう」

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