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衆の子、毛利の子  作者: ルビー
第5章・中国暗雲
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第45話・あの武将は今

【天正7年・別所長治】


「長治、毛利の書状には何と?」


「大友が挙兵したので東上はできない。

 大友を始末したらすぐに播磨に向かうので

それまで対得てほしい。と」


「な、なんじゃと。毛利は我らを見放す気か。

 別所と荒木が毛利方につき、毛利の東上はたやすくなっておるというのに、

 毛利は大友なんぞにてこずりおって。

 我らはどんな思いで織田を裏切ったと思っておるのじゃ」


「叔父上、あまり大声を出さないでいただきたい。

 このことが兵たちに伝われば士気が下がります」


「もーうりめー」


叔父上は少しうるさいがああなるのも無理はない。

我らは毛利を頼りに織田に反旗を翻したのだから、

毛利が来なければ意味がない。

だが私は信じている。

毛利はきっと播磨に来てくれると。


【天正7年・荒木村重】


まずい。本当にまずい。

毛利が来なければまずい。

高山・中川が裏切った今、

私の頼みは毛利家だけ。

それが今東上できんと。

はっはっは。笑い事じゃ。

これが主君を裏切った時の気分か。

はっ、はっはっは。ははっ。


【天正7年・姫路城】


「官兵衛、首尾はどうだ?」


「上々でございます。

 宇喜多に山名、それに南条らもこちらに傾いております。

 毛利の使者があちらこちらで動いてるようですが」


「毛利の使者は問題ないのか?」


「ええ、今のところは」


「今のところ?まあいいだろう。

 しかしまだ別所はたえるなあ。

 毛利の援軍は期待できんのに」


「彼らも一度決めたことは貫かないといけないと思っているのでしょう」


「ふんっ。そういうものか」


【天正7年・天神山城】


「そうか。腹をくくったか」


「はい。ですが、南条への疑念を増やしても

 我ら宇喜多家への疑念を晴らすことにはなりませんよ」


「少しでも時間稼ぎができればそれでよいのだよ行長。

 もうすぐことが成るのだからな」


「はあ」


「そういえば、南条に来たという毛利の使者、

 山名にも行っていたらしいな」


「因幡にいる父の商売相手から聞いた話ですが、

 毛利家当主の毛利輝元の弟らしいです」


「ほう。弟君自らが引き止めのために中国地方を回っているというのか。

 毛利も余程人材不足なのかな」


「さて、私も父の商売相手からの情報しかないので」


「行長、その毛利の弟君の顔を一度拝んでみたいものだな」


「ここに連れて来いと?」


「ふんっ。まあ近いうちに向こうからわが天神山城に出向いてくれるであろう」


「そのものをどうする気で?」


「はっ。顔など息してなくても拝めるわ。

 だがわしもそのものを知らぬしお前も知らぬだろ」


「ええ、話にしか聞きませんので」


「ならばそのものの容姿特徴を見て来い」


「それは…」


「なに、宇喜多の家臣といえば必ず会うだろ。

 心配ない」


「心配なのは殿の方ですが」


「ぎゃっはっは。行長は臆病じゃの。

 折角弁は立つにそれでは勿体無いのお」


【天正7年・毛利元広】


鳥取城か。

またここに来たか。

山名豊国は全くつかめないからなあ。

史実では家臣に追放されるけどそんな感じでもないしな。


「あなたが毛利輝元公の弟君か」


「誰だ?」


「宇喜多家家臣、小西行長。

 貴殿が鳥取城に行ったと聞いたので追いかけてきました」


「小西行長だと!」


「少しお話ししましょうか」

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