第4話・毛利家での注意事項?
「・・・」
「・・・」
俺と美祢は今、あの剛将・吉川元春の操る馬に乗っている。
それにしてもこの威圧感。
吉川元春と一緒の馬に乗れるのはいいけど、
こう威圧感があると・・・
「どうした?」
「いえ、でも、ちょっと威圧感が・・・」
「我慢しろ」
あ、そうですか。そうですね。
でもなんだよ。元就の爺さんや父上とは、対応が全く違うじゃないか。
まあ、初対面だからしょうがないのかもしれないけれど・・・
「おい」
「は、はい」
「もうすぐ着くぞ」
なんか、いちいち声を聴くたびにビクッとするんだよな。
あー。あれが郡山城か。
さすが、毛利家の本拠地・吉田郡山城、
そこらの山城とわわけが違う(と、思う)
「着いたぞ」
「あの」
「なんだ?」
「ありがとうございました」
なんていってみたりする。
「あ、ああ。父上に言われたから、お前を送ったまで。
これから事情を説明せねばなるまい。
興丸、美祢、ついてこい」
「あ、はい」
そうか。まだいろいろあるんだ。
まだくつろげそうにないな。
そういえば、まだあの智将・小早川隆景にあってないなぁ。
どこにいるんだろう・・・
「何をしている。早く来い」
そうだった。まずは事情を説明しないと。
詳しいことは吉川元春が説明してくれるだろう。
「興丸、美祢。この部屋で待っておれ」
「わかりました」
とうとう事情を説明に行くか。
その間、何をしようか。
そうだ。今まで起こったことを一回整理しておこう。
まず、父上が屋敷に押し入ってきて、
俺が父上の子供ということが判明する。
でもここで母上が斬られる。
でも、一体誰に切られたんだ?
謎である。
次に父上に連れられ、毛利元就と話して、一騎打ちをする。
あれ?ちょっと待て、
確か、父上こと毛利隆元は今、九州にいるはずじゃ・・・
これは歴史のあやというやつなのか。
そして、吉川元春に連れられ、今ここにいる。
なんだ?このうまくいきすぎているかん。
こんなにうまくいっていいのか。
絶対なんかあるような、ないような・・・
「おい」
なんだよ。いきなり入ってくるなよ。
「な、なんですか?」
「事情は説明した。まず、幸鶴丸に会え」
「幸鶴丸?」
「そうだ。兄上の嫡子だ。つまり、お前の兄にあたる」
「兄、ですか」
「そうだ。美祢、お前はもう少しここで待っていろ。
興丸、行くぞ」
「はい」
幸鶴丸って、確か毛利輝元のことじゃなかったっけ。
俺の兄かぁ。となると、この吉川元春は俺の叔父、になるわけか・・・
気が引けるなぁ。
「着いたぞ」
吉川元春が襖を開けると、そこには少年がいた。
まあ、俺も少年なんだが・・・
「幸寿丸、こいつがお前の弟にあたる興丸だ」
こいつってないだろ。
一応、あんたの兄の子供なんだからな。
「お前が興丸か。叔父上から話は聞いているぞ。
俺は幸寿丸だ。宜しく」
「よ、宜しく」
子供だな。俺もだけど・・・
「お前、今日から俺のことを兄上と呼べ」
「えっ?」
「だから、兄上と呼べ、ちょうど弟がほしかったところだ」
初対面だぞおい。
初対面で兄上と呼べって、兄だけど、一応初対面なんだから、
その上から目線やめてくれません。
まあ、そう思っても、変わらないのが人っていうもんだからね。
「は、はい。わかりました。兄上」
「よし、それでよし」
「それじゃあ興丸。
これからいろいろ説明する。
こちらに来い」
「はい」
甥の前でも威圧感は変わらない。
俺は美祢のいる部屋に戻り、いろいろ説明を受けることとなった。
剣術の稽古のこと、生活のこと、いろいろ聞いて、
やっぱりそう簡単にはいかないんだなと思った。
「それと、言葉づかいには気をつけろ」
「言葉づかい?」
「俺と、今度紹介する隆景のことを叔父上、
幸鶴丸のことを兄上、その他、場合にあった呼び方。
そして、父上、元就には、特に言葉づかいを気をつけろ。
あの人は言葉づかいに厳しい」
「はい、わかりました」
「わかったら、今日はこの部屋で寝ろ。
俺は明日、また戦場に戻る。
いいか、行ったことをちゃんと守れ」
「わ、わかりました。叔父上」
「それでよし」
つかれるなぁ。やっぱりこんなところに来なかったほうがよかったのかな。
これからいろいろ大変だ・・・