第43話・企みと怒り
少し遅れましたが、あけましておめでとうございます。
【天正7年・毛利元広】
俺は月山富田城で元長殿と合流し、
伯耆国・羽衣石城へと向かった。
「父上を危険にさらさないよう。
全力を尽くそう」
「わかっています元長殿」
【天正7年・羽衣石城】
「南条殿、主君・宇喜多直家からの書状で御座います」
「小西殿、ご苦労だな」
「南条殿、貴方がどう動くかで中国地方がどうなるかが決まります。
よくお考えください」
「これを読んだだけではわからん。
宇喜多殿のお考えを詳しくお聞かせ願おう」
【天正7年・毛利元広】
「元広殿、ここが羽衣石城です」
「元長殿、準備はよろしいか」
「ええ」
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「ここの城主はいつまで待たせる気か」
「元長殿、落ち着いてください」
「客人を一刻も待たせる奴がいるのか。
南条はわれらを軽く見ているのではないか」
「そのようなことはないのではないですか。
南条の妻は元春叔父上の娘だと聞いておりますが」
「娘は娘でも父上の実の娘ではない。
南条に嫁がせるために吉川一族の娘を養女にしたのだ」
「はあ」
「遅い遅すぎる。
その間茶の一杯も出さぬとは、この家はどうなっているのだ」
元長は騒ぎすぎだが確かに遅い。
もしや別の場所でなにか密談でもしてるのでは?
前もって連絡していなかったからそれもあり得る。
しかし、それでもここまで待たせるか?
んー。わからない。結局何もわからない……
「もう待てぬ、南条元続はいったいどこにいるのだ。
そっちが来ぬのならこちらが行くぞ。
隠れていても必ず見つけるからな」
「元長殿、ここは言っても敵かもしれぬ者の城、
何をされるかわからないのですよ」
「何を申すか。我らを軽く見るとはすなわち、
毛利家を軽く見ているということにほかならぬのだぞ。
黙って待っておれぬわ」
確かに、さすがに我らをほったらかしすぎなところもあるような。
こんなことしたら怪しまれるに決まってるのに。
いったい何考えてんだ。
【天正7年・南条元続】
「吉川殿が」
「我々の動きを毛利家に伝えているようですが」
「吉川殿といい、今回毛利家から来た使者といい、
我らは怪しまれてるのですか」
「ええ、そうでしょう」
「しかし、ここまで毛利の使者を待たせれば」
「毛利家を軽く見ていると怒り狂いますな」
「ならばなぜそのまま放置しておくのだ」
「矛先を少しでも宇喜多家から遠ざけるためですよ」
「なにっ」
「南条殿は迷っておられる。
原因は奥さまですか。なんと女々しい」
「な、なにを」
「ここまで来て引き返すことができませんぞ。
主君からの伝言をお伝えしました」
「・・・」




