第42話※・元春の決断
【天正7年・?】
「形勢は大きく変わり始めている。
我らも見極めねば……」
【天正7年・毛利元広】
鳥取城から戻った俺は、
多治比猿掛城で年を越した。
「殿」
「春継か。どうした」
「吉川殿から書状が届いております」
「叔父上から?なんだ」
なぜ書状なのか?
不思議に思い急いで書状を読み始めた。
「・・・。して、なんと?」
「しばらく郡山城には行けぬ故、
その間、元長と共に山陰仕置きを頼むと」
「吉川殿に一体何が?」
「わからん。
それに、郡山城に行き、隆景叔父上から
話を聞くようにとも書いてある」
「お二方は殿に何をさせようとしているのでしょうか。
春継めには理解ができかねます」
「俺もだ」
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書状を受け取り、急いで郡山城に来てみると、
城内はいつもとは少し違う雰囲気だった。
「毛利元広殿ですね」
「あなたは、
乃美殿ではありませんか」
「主人がお待ちしています。こちらへ」
言われるがままついていくが、
やはり何かおかしい。
なぜ小早川水軍の将である乃美宗勝が、わざわざ俺を出迎えに来ていたのか。
なにかある。
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「元広、早かったな」
「隆景叔父上、元春叔父上から話を聞くようにと書状が届きましたが、
何がありました」
「うん。宗勝殿、元広にあれを」
「はい。
先日、三原城に元春殿から書状が届きました」
そういうと、その書状を差し出した。
その内容は、
『先日岡山に訪れたところ、商人から悪いうわさを聞いた。
宇喜多に叛意あり、と。
さらには毛利と織田の間で帰属が定まらない南条もそれに賛同すると。
私はしばらく岡山にとどまり宇喜多の動きをみる。
それから、私が岡山にいる理由は別所の後詰めということにし、
本当の理由は輝元はじめ数人にしか話さないように』
「元春叔父上は岡山にいるのですか」
「ああ、この話は数人にしかしていないが
宇喜多はこのことに気付いているだろう」
「それでは、
叔父上の身が危ないのでは?」
「それは兄上もわかっていて岡山にとどまっているのだろう」
「私は何をすれば」
「元広には美作・羽衣石城の南条元続の元に行ってほしい。
南条は、兄上が危惧しているものの一つだ。
南条元続には兄上の娘が嫁いでいるから、
くぎを刺してくるだけでよい」
「お任せください」




