第41話・鳥取対談
【天正6年・鳥取城】
「羽柴殿との関係についてです」
「羽柴殿との関係ですか。
毛利殿はなぜそのようなことを?」
「どこからか、山名家が羽柴殿と繋がっているということが判明しました。
もちろん、山名家の使者が羽柴殿の陣所に入るところも確認しています」
「ハッハッハ。山名家が羽柴殿と通じているというか。
毛利殿、戯言を申す出ない。
確かに羽柴殿に使者は送った。
だが、羽柴殿と通じているということは一切ない」
「では、なぜ山名家の使者が羽柴の陣所に入っていったのですか」
「それは、まだ言えませぬな」
「なぜ?羽柴殿と通じていないというのであれば、
羽柴殿の陣所にいった使者が何をしていたのかを説明してもらわないと困ります」
「こちらも今言うと少し困ったことになるのじゃ。
今日のところは一旦おしまいにして、明日また話しましょうぞ。
屋敷をご用意します故、今夜はそちらにお泊まりください」
「それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
【天正6年・毛利元広】
追い返しもせず、身の潔白も証明せず、
山名は一体何を考えているんだ。
山名豊国。まったく見えない・・・。
「「かさかさ」」
ん?外から音がするな。
何をやってるんだ?
おっ、あれは・・・
【天正6年・鳥取城】
翌日、再び毛利元広と山名豊国が顔を合わせた。
「毛利殿、昨日はよくお休みいただけたでしょうか」
「ええ、問題なかったです。
それより、昨日私を鳥取城の屋敷に泊めたということは、
今日こそは羽柴殿との関係について、話していただけるのですね」
「ハッハッハ。まだそのようなことを。
毛利殿が疑っているようなことはありませぬぞ」
「何を仰せですか。
昨日、私が泊まっていた屋敷から見えましたよ。
なにやら運んでいるのがね。
運んでいた者が羽柴の家紋をつけていたことも、すべて見ておりましたよ」
「ほー、そこまで見られておりましたか。
それは誤算でした。
あまり話したくなかったですが、ここまで見られていれば致し方ない。
こちらに来てください」
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「皆の者、準備は進んでおるか」
「殿、順調に進んでおります」
「そうかそうか。よいか。すべて滞りなくやってくれ」
「これはなんですか?」
「今日、山名家内で大宴会を催すにあたり準備をしている最中です。
羽柴殿に使者を送っていたのは、
播磨の新鮮な魚を因幡まで運ぶための時間稼ぎのようなもの」
「魚ならば日本海や瀬戸内の魚介類でも良いのでは?」
「それでは面白みがないではありませんか。
いつも日本海や瀬戸内の魚介類では家臣も飽きましょう」
「はあ」
「この宴会で羽柴殿と連絡を取ったことを事前に毛利殿に報告していなかったこと、
申し訳ない。このことは宴会が終わったのちに、
説明させていただこうと思っておりましたが、その考えが甘かったのでしょう。
そのお詫びといってはなんですが、今日の宴会に、毛利殿も参加なされてください」
「私もですか」
「ええ、ぜひ」
「はあ。それでは参加させていただきます」
【天正6年・山名豊国】
「毛利殿、飲んでおりますか」
「いえ、私はすぐに月山富田城に帰らなければいけないので」
「何をおっしゃる。毛利殿が遠慮なされることはない。
ほらほら、因幡の銘酒ですぞ。播磨の魚もあります。
それをつまみにどんどん飲んでくだされ」
「ではいただきます」
「そうそう、その意気じゃ毛利殿、
おっ、わしはちょっと厠に」
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「山名殿、どうでしたか?」
「毛利殿は家臣どもと因幡の酒と播磨の魚を楽しんでおります。
敵地で取れたものを」
「ほお、毛利殿も召し上がってくださいましたか。
この官兵衛も魚を送った甲斐がありました」
「このたびはありがとうございました。
今後も良しなに」
「こちらこそ」




