第39話・いざ鳥取へ
【天正6年・毛利元広】
城で勝丸と龍とのんびりしていた最中、
突然松山城にお呼びがかかった。
何かあったのかと来てみたら。
「荒木村重が織田を裏切ったのですか」
薄々そうなるだろうなと思っていたけれど。
やっぱり歴史は正しく動くのか。
「そう驚くな。
今までその兆候がなかったわけでない。
それに荒木村重の離反は、将軍の差し金だ」
「鞆にいる上様のですか」
「ああ、隆景の話ではそのようなことを言っていたらしいし、
現に、将軍の側近が最近盛んに摂津方面に行っていたらしいからな」
「はあ、それで、隆景叔父上は?」
「隆景は別所や荒木、本願寺に援助するために準備を行っている」
「それで、なぜ私を呼び出したんですか?
それを伝えるためではないでしょう」
「さすがお前も鼻が利いてきたか。
実はな、鳥取城に行ってほしい」
「鳥取城に?」
「そうだ。鳥取城城主の山名豊国が最近怪しい」
「怪しいとは?」
「織田方と通じている可能性がある」
「織田方と、ですか」
「そうだ。織田方と通じてる可能性が、きわめて高い。
奴ら山名家はかつては毛利に反抗していた奴らだ。
裏切る可能性が高い。
宇喜多が危ないうえに山名にまで裏切られたらたまったもんじゃない。
わしは但馬に行かねばならぬ故、鳥取城へは行けぬ。
月山富田城に元長と元秋が居る故、そいつらと話し合い、
山名に事情を聴きに行け」
「元長殿がいるならば、元長殿に行かせればよいのでは」
「元長はわしに似て武功はあるが、
そのようなことについては向いておらん。
元秋も最近体を壊しておりとてもいけるような体調であらず。
暇なのはおぬししかおらん」
「暇って。ですがそういうことなら行かせてもらいます」
「そうか。よろしく頼んだぞ」
そんな感じで鳥取城に行くことになった。
【天正6年・小早川隆景】
「その兵糧は本願寺に、そっちの矢は三木城に」
今こそ播磨に打って出る好機にも関わらず、
別所や本願寺に兵糧や武器を送る事しか出来んとは。
山陰に問題があるとはいえ、これは歯がゆい。
「兄上、何をしているのですか。
早う指示を」
「元清か。済まぬ。
その銀貨は有岡城へ」
いやいや、そんなことを考えていてはいかん。
これは父上の東に向かってはならぬという遺言を破ってのもの。
焦ってはこちらが倒れてしまう。
「兄上、早う」
「済まぬ。
その箏は本願寺へ」
まずは宇喜多に対しての警戒を強めることが第一。
東に出ることは二の次じゃ。
起ってくれた別所や荒木には悪いが今の毛利には足場を固めなおすことが先決。
それまで耐えてくれ。
「兄上」
「済まぬ。
その夏みかんは三木城へ送ってくれ」
次回から新章突入。




