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衆の子、毛利の子  作者: ルビー
第4章・播磨動乱
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第35話・決断の時

【天正6年・毛利元広】


「元広殿」

「元清殿、前線はどうなっていますか?」

「問題はないでしょう。

 前線の勢いから見て、今日中には決着がつきましょう」

「そうですか」


戦況は覆らなかったな。


【天正6年・羽柴秀吉】


「殿、上月に送った織田軍、劣勢で御座います。

 このまま戦闘を続ければ壊滅は確実。

 直ちに撤退の命を」

「やはり無理だったか。

 わかった官兵衛、今すぐ撤退させよ」

「はっ」

「わしは安土に行ってくる。

 その間、陣を頼んだぞ」

「お任せください」


【天正6年・毛利元広】


「元広、此度の戦は大義であったな」

「ありがとうございます。叔父上」

「これで上月は落ちたも同然。

 織田の勢いもさらに落ちるであろう」

「それはともかく叔父上、

 私に子が生まれたこと。知っていましたか?」

「何を言っている。知っているに決まっているだろ。

 今さら何を言っている」

「やっぱり」

「なんだやっぱりとは」

「私は先ほどの戦の最中、元清殿から聞かされたのですから」

「なに?お前に知らせてなかったか。

 すまんすまん」

「叔父上!」


やっぱり叔父上だったよ。


【天正6年・安土城】


「信長様、現在、織田軍劣勢で御座います。

 滝川殿、明智殿の援軍を早く播磨に入国させていただきとうございます」

「織田が劣勢なのは上月が原因ではないのか」

「上月が?」

「上月に織田の兵・1万がおかれているせいで東播磨の城攻めが進まず、

 劣勢になっているのではないか」

「いいえ、それは違います」

「違わん。原因は上月にある。

 上月においている1万の兵を直ちに東播磨の城攻めに使え」

「それは、上月を見捨てろと?」

「足を引っ張っているものは切り捨てるのが戦の常。

 それに、播磨を手に入れればまた上月も戻ってくる。心配はない」

「それでは、上月にいる尼子はどうなるのですか」

「それは自分で決めろ」


【天正6年・尼子勝久】

この日、上月城周辺に陣を張っていた織田軍が撤退した。

それは我ら尼子が見捨てられたことを意味していた。


「殿、こうなれば城から出て戦い、

 討ち死にするのみ。尼子の名を後世まで残せる働きをしましょう」

「待て鹿之助。尼子もすでに命運尽きた。

 今打って出ても悲惨な状態になるだけだ。

 ならば今わしが腹を切り、鹿之助、お前は毛利に下れ」

「今さらこの鹿之助に生き恥をさらせというか」

「鹿之助、わかってくれ」

「・・・」


やはりすぐには納得しない。

納得するようならここまで尼子に仕えはしないだろう。

だが言った通り尼子の命運はすでに尽きた。

だがここまでつき合わせた鹿之助を殺すわけにはいかない。

なんとしても鹿之助を毛利の軍門に下す。

それがわしの鹿之助にしてやれる最後の仕事だ。

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