第31話・播磨再出陣
【天正6年・毛利元広】
「元広、羽柴の手下の軍勢に負けるとは何事じゃ」
「申し訳ございません」
「落ち着いてくだされ、兄上。
どちみち播磨には大軍を送る予定だったのだ。
そこで落とす城が一つ増えようがどうということがない」
「ふんっ。
元広、今度の戦で失態を取り返せ」
「はー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺は出陣の前、短刀の補修のため、備中松山城下を歩いていた。
そしてどこかいい鍛冶屋がないか物色していた。
「そこの人よ」
「うん?」
「そこの侍よ」
「俺のことか?」
「そう、貴殿だ」
俺が話しかけられたのは、
若い僧侶だった。
話していくとその僧侶の名は宗栄といい、近くの寺で修業を積んでいるという。
「貴殿からは不思議なものを感じます。
この世界の人とは違う何かが」
「何かとは?」
「それは分からない。
ただ貴殿は・・・。
いや、これはまた会ったときに」
「ええ」
あの僧侶はなんだったんだ・・・。
【天正5年・羽柴秀吉】
「尼子殿、貴方には上月城を守ってもらいたい」
「誠で御座いますか」
「ああ、尼子殿以外に頼める相手が居ないのじゃ。
受けてくれるな」
「それはもちろん。願ってもないことで御座います」
「それはよかった。毛利が来るかもしれんがの」
「毛利には因縁がございます。
我が祖父と父を殺したのは毛利のようなもの、その毛利を相手にできるとあらば、
我ら光栄で御座います」
「この戦いが終われば、必ず尼子家を再興しよう」
「ありがとうございます」
【天正6年・毛利元広】
年明けすぐの1月、毛利軍は備中松山城を出発、
数日後に播磨に入った。
「これから上月城を包囲する。
元広、なんとしても失態を取り返せ」
「わかっています。叔父上」
毛利軍は到着後すぐ柵や堀を設け、城を包囲した。
それはさぞ壮大なものだった。
【天正6年・羽柴秀吉】
「官兵衛、どう思う」
「毛利の軍勢は宇喜多と合わせ4万、
我ら羽柴軍は2万、これでは分が悪すぎます。
ここは信長様に援軍を頼んだほうがよろしいかと」
「そうじゃな、ここで尼子を失うわけにはいかぬ」
「毛利攻めのためにも、ですな」
「ああ。
いまから安土城に行ってくる。
官兵衛、その間頼んだぞ」
「はい。お任せください」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「サル、援軍がほしいか」
「はい、今上月城を失っては、毛利攻めが難しくなります」
「勝家や光秀もわしに援軍を求めてきている。
それを蹴っておぬしに援軍を送れというか」
「お願いいたします」
「・・・」
「信長様?」
「わかった。援軍を遣わそう。
まずは村重を送りその後、わしも播磨に入ろう」
「あ、ありがとうございます。
これで毛利も一捻りでありましょう」
【天正6年・三木城】
「長治殿、御気持ちは決まりましたでしょうか?」
「今織田に逆らっても勝てるわけがない。
松永殿がいい例だ」
「いえ、我らが一丸となれば必ず織田に勝てます。
それに、播磨はすでに我々の味方です」
「なに?」
「別所殿が立てば、播磨は我々の手の内に入ります」
「・・・」
「どうか、御決断を」
「・・・」




